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女性にやさしいキャッシング!?ムトウが廃業に至るまで

貸金業界は時代の移り変わりとともにその業態を変えながら、人の生活のすぐ傍に寄り添ってきました。不況のあおりを受けた昨今、月々の収入だけでは急な出費に耐えられない家計事情を抱えている人は少なくありません。小額から融資してもらえるキャッシングやカードローンは、現在では当たり前のようにテレビCMが流され、誰でも気軽に利用できる生活のサポーターのような存在になっています。

しかし大手消費者金融や銀行のカードローン会社などが飛躍している一方で、ここ10数年の間に中小規模の金融業者は吸収合併や廃業などで数を減らしています。こうした背景には、貸金業法などの改正やネット経済の普及にともなう、大きく変わった金融市場での生き残りをかけた各社の苦悩がみてとれます。

㈱ムトウクレジットの場合
ムトウクレジットという貸金業者をご存知でしょうか。創業は昭和58年、もとは静岡を拠点とする洋裁事業の会社でしたが、訪問販売や通信販売を主流に規模を拡大し、キャッシングやクレジットを軸にした貸金事業を展開するまでに至りました。

もとが洋服を扱う通販会社であっただけにその顧客は女性が多く、ムトウクレジットとしても若い女性や主婦層をターゲットに「女性にやさしいキャッシング」というイメージ戦略を謳い文句に、簡易審査と少額融資により会員を募っていきました。

ちなみに一度会員登録をすると、その後は電話一本でいつでも融資を受けられ、また限度額についても業者側からどんどん増額を勧められるなど、借りたい人にとってはとても便利な環境が整えられていたようです。

女性にやさしいキャッシング
キャッシングの世界で言う「女性にやさしい」とは、プライバシー保護の観点が重要と言えます。女性でキャッシングを必要としている人の中には、夫や家族に内緒でお金を借りたいという主婦層が多いため、収入確認で会社や自宅に電話をかけられては困ると考える人が少なくありません。
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また夫に比べると個人の収入が低い主婦にとって、審査が厳しいと融資を受けられない可能性もあります。こうした状況を鑑みて、女性をターゲットにした貸金業者は、収入確認の電話をしないなどのプライバシー保護と、審査基準の甘さをサービスの柱として、女性顧客を募っていく傾向があります。

また女性をターゲットにした金融会社では、窓口やコールセンターでの電話応対のスタッフにも女性を起用していることがわかります。女性同士で話すことで得られる安心感や、その人の抱えている悩みなどにも共感でき、融資に関する相談にも気軽に応じられる点で重要な要素といえます。

厳しい貸付条件
審査が甘く融資を受けられやすい一方で、収入の低い女性顧客をターゲットにする業者としては、貸付条件や督促の面では大変に厳しく、しばしば消費者との間でトラブルに発展することも多く、問題視されてきました。

ムトウのような中小規模の金融業者が数多く存在していた90~2000年代前半までは、法律による厳しい規制や罰則もなかったため、ある意味自由な営業手法で、利息や督促方法を定めることができていたのです。

ムトウクレジットの問題点
他に違わず、ムトウでの貸付条件も厳しいものがありました。現在もインターネット上に残る貸付条件を見ると、実質年率21~27%と高利率だったことがわかります。

またムトウクレジットに対する口コミ評価を参考に、借入れ後の対応を見ていくと、プライバシー保護は最初のうちだけで、少しでも支払いが遅れると督促の電話が自宅にかかってきたり、請求書が郵便受けに届いて家族に借金の実態がばれてしまうなど、本末転倒な結果にも陥りやすかったようです。

法改正による金融業界への影響
2000年代に入ると、消費者法の制定や改正がさかんになりました。これにより悪質な業者を取り締まり、また各販売業者や金融業者への行政指導を徹底させるなどして、社会の秩序を守り消費者を保護するための様々な対策が施されました。

改正貸金業法と貸金業者
貸金業法(旧称:貸金業の規制等に関する法律)は昭和58年に制定され、その後何度かの法改正を経て内容を強化させてきました。

中でも2003年の「ヤミ金対策法」や2006年の「グレーゾーン金利廃止」「利息制限法改正」などは消費者保護に大きな成果を上げた一方で、金融業界に多大な影響と打撃を与えました。

改正により、かつてヤミ金業者が行っていたような、拡声器を用いて大声で取立てたり、近所へ張り紙をするような激しい取立て行為や、法外な利息で必要以上の返済額を要求するような行為は厳しく取り締まりを受けることになりました。

特定商取引法改正と訪問販売業者
貸金業法改正とともに大きな影響を与えたのが、「特定商取引法」と「割賦販売法」の改正です。ムトウの本業は訪問販売と通信販売でしたので、ネットが普及する前は営業職員の直接訪問による販売方法が主流となっていました。

また、この時代までは点検業者による訪問販売やマルチ商法などのいかがわしい販売業者が暗躍しており、購入した商品の返品を受け付けない業者や、解約しようとすると激しい妨害行為をする業者も多く、消費者との間でさまざまな問題を生みだしていたことも事実です。

そこへ2009年12月に「特定商取引法」、並びに「割賦販売法」の改正がありました。この改正では、販売後の解約期間を設ける「クーリングオフ」制度の義務化や、クーリングオフ妨害に対する規制、マルチ商法や点検商法(水道の点検と称して浄水器を売りつけるなど)に対する消費者への販売目的の提示など、販売を行う業者に対しての細かい規定が定められました。

これにより、それまで訪問販売や点検商法の罠に嵌りやすかった消費者は悪質な販売手法から守られることになりましたが、逆に業者としては、それまで自由な戦略で営業活動ができていただけに、法改正により顧客を獲得することが難しくなったのが事実です。

こうした法改正以降、ムトウのような中小規模の貸金業者や、違法な訪問販売業者は自由な営業活動を制限されることとなり、みるみる規模を縮小し、数を減らしていきました。
実際に町を歩いてみると、かつて電柱や電話ボックスになどにびっしり貼られていた金貸し業者のビラも、最近は少なくなってきたように感じます。また自宅への直接訪問の業者や電話勧誘なども大幅に減りました。

ムトウクレジットの廃業
ムトウクレジットは㈱ムトウの訪問販売活動と密接に連動してクレジット業務を遂行していたため、特定商取引法の改正に伴って訪問販売の業務が縮小されることを予見したのか、改正特商法の施行直前の、2009年6月に全ての貸金事業を廃止し、新規のクレジット業務を中止しました。

当初ムトウが行っていたような、クレジット業務における高い年率と執拗な督促行為、または販売業務における直接訪問による販売行為は、どちらも法改正に伴い次第に自由がきかなくなることが予想されたためと思われます。

廃業後のムトウクレジット
㈱ムトウは、その後㈱スクロールに社名変更し、時代の変遷とともに形を変えて、現在はネット通販・カタログ通販の会社として大手の仲間入りを果たした成功例と言えます。

ちなみにクーリングオフ制度はネット通販には適用されておらず(返品の受付可否の明示は義務)、この点でも訪問販売より費用対効果のメリットが大きいと思います。ホームページを見てみると、ネット通販事業では女性向けのトレンドを意識したファッションアイテムを豊富に取りそろえ、その支払方法などを見ても自社のクレジット事業の紹介やキャッシングの勧誘などの文言は見当たりません。

ただし女性を中心としたマネー講座を開催することがあったりと、クレジット業務を廃止した現在も、やはり女性をターゲットにした顧客獲得は巧みだなという印象は見受けられます。

過払い金訴訟について
また貸金業法改正の際に定められた「グレーゾーン金利」の廃止にともない、かつてムトウクレジットから必要以上の返済額を求められ支払ってしまった人達が、現在過払い金の返還を求めて数々の訴訟を起こしています。ムトウクレジットからお金を借りた経験のある人は、返済した金額に過払い金がなかったか、いま一度思い返してみましょう。取り戻せるお金があるかもしれません。

キャッシングはやっぱり大手から
貸金業法の改正は、それまで悪質な金融業者のやり方に追い詰められがちだった消費者を保護し、社会の秩序を保つ上で大きな役割を果たしました。

それまで「どこからも貸してもらえない」というような、信用情報機関に借金の事故情報がある人(いわゆるブラックリストに載ってしまっている人)にとって、審査基準の甘い業者は駆け込み寺的な場所であったことも事実です。

ちなみに近年でも、こうした業者は存在し、表立った活動をしていないだけで営業方法を変えつつ暗躍しています。一度でもお金を借りてしまえば、法外な利息に苦しみ続けることになります。どんなにお金が必要な場合でも、こうした業者から借りるのはお勧めできません。

改正貸金業法は、こうした悪質な業者を取り締まるだけでなく、多重債務のスパイラルに陥ってしまう消費者の増加を防ぐ役割も担っているのです。

女性がお金を借りたいとき
お金と人間はとてもシビアな関係です。借りたら返すのが常識、それが利息のついた借金なら尚更です。お金は借りる前にしっかりとした返済プランを立てることが重要です。とくに個人収入の低い主婦がお金を借りるならまずは家族へ相談し、どうしても必要な場合には、それなりの知名度がある大手のキャッシング会社を利用することをお勧めします。

某大手消費者金融では年利14%、審査はスピーディで即日融資も可能ですが、信用情報を見ることなく融資をすることはありません。主婦でも借入可能と宣伝している業者もありますが、それにはしっかりとした収入証明が必要で、個人収入が低ければ限度額を抑えたり融資額を控えたりと、それなりの対応をとってくれます。

また法令遵守が叫ばれる現代において、プライバシーに関しても配慮がなされています。督促に関しても、金融会社の社名を記載した請求書が自宅に送られてくることもなく、ある程度余裕のある大手の金融会社であれば、支払期限の延長など電話相談にも応じてくれるでしょう。

借りる前に考えよう
そもそも主婦や学生が、家族に黙ってお金を借りようとする行為自体が危険の始まりと認識しなければなりません。それに、きちんとした収入の確認もせずに審査を通過させる業者には、簡単にお金を貸してくれる裏で、貸付条件や督促などの面で厳しい現実が待っているものです。

また借りる前に、返済額のプランを事前相談しておくと良いでしょう。コールセンターのスタッフに相談するか、ホームページ上で返済シュミレーションができる場合もあります。借りすぎには注意し、できるだけ短期間で完済できるよう、計画性をもって借入れをするよう心がけてください。

【参考ページはこちら】
誰にもバレないキャッシング方法を教えて!

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