車や家電製品の買い替えなどで高額な出費があるのに、手元にまとまったお金が無い…、そんな時に頼りになるのがキャッシングです。
とはいえ、必要なだけのお金が借りられないとなるとまた問題ですよね。だから、例えば「年収が640万円なんだけど、いくら借りられる?」といった質問が寄せられることもあります。
確かに、最終的には審査で融資金額が決定されるのですが、実は貸金業法の「総量規制」という法律によって、上限が厳密に決められているんですよ。
そして、この上限を知っていることが、申し込みの際の審査の通りやすさにも関係してきますから、気になるところです。
そこで、知らないと損な総量規制について、詳しくご紹介します!
総量規制は貸金業法による決まり!借りられるのは年収の3分の1まで
貸金業法とは、貸金業者に分類される業者が融資を行う上で守るべき法律です。その貸金業法によると、個人がお金を借りる場合の上限が厳密に定められています。その上限を定めているのが、総量規制です。
では、総量規制について詳しく見ていきましょう。
総量規制によると個人が借り入れできるのは年収の3分の1まで!
ここで、借り入れをしているお金の総額となっていることに注意が必要で、1社からの借り入れだけではなく、借り入れ先が複数ある人の場合、それらをすべて合計して年収の3分の1を超えないようにしなければいけないということです。
以前はこのような決まりはなかったのですが、多くお金を借り過ぎて返済が不可能になる多重債務者が増えたことを背景に、個人のお金の借り過ぎを防ぐ目的で新たに導入された内容です。
これを元に考えると、最初のお話にあった年収が640万円だという人の場合、借りられる金額は以下のように計算できることになります。
年収が640万円の人は法律の定めに従うと最大で213万円まで借りられる
とはいえ、当然のことではありますが、いくら計算上借りられる金額が決まっていても、利用したい商品の利用限度額を超える借り入れはできませんので、高額の利用を検討するなら利用限度額の高い商品を選ぶことが必要です。
それから、もともとの年収が0と計算される専業主婦の場合、3分の1にしてもやはり0になるため、貸金業者からはお金が借りられないことになります。
総量規制の対象となる借り入れ
総量規制は貸金業者が守るべき法律である貸金業法内の決まりごとなので、総量規制の対象となるのは貸金業者からの以下のような借り入れになります。
- 消費者金融会社からの借り入れ全般
- クレジットカード会社からのキャッシング
- 信販会社からのキャッシング
クレジットカードにはショッピング枠とキャッシング枠がありますが、クレジットカード会社や信販会社から発行されているクレジットカードを使ってショッピングを行った場合は、総量規制の対象にはなりません。なぜかというと、お金を借りるのではなく商品代金を立て替えてもらっている形になるからです。
ですが、クレジットカードのキャッシング機能を使ってお金を借りた場合は、現金を借りることが目的となりますので、総量規制の対象となります。また、クレジットカード会社や信販会社からもローン専用のカードが発行されていますが、このローンカードを使う場合もお金を借りることが目的なので総量規制の対象となります。
総量規制の除外と例外
先ほどもお話したように、総量規制は多重債務者を出さないことを目的としていますので、全ての借り入れを制限しているわけではなく、利用者が困ることが無いように除外や例外を設けています。
除外の貸し付けは、そもそも総量規制の対象とならず、借入残高として計算されません。除外の貸し付けには、例として以下のようなものがあります。
- 自動車や不動産、有価証券などを担保とする貸し付け
- 高額療養費
- 不動産の購入や改良の際の貸し付け
要は、自動車ローンや住宅ローンのように担保がある場合や、療養費など借り入れをする人にとって必要とされるお金の場合は総量規制から除外されていると考えていいですね。
それに対して例外の貸し付けは、借入残高としては計算されますが、例外的に返済能力が認められれば年収の3分の1を超えても融資可能とするもので、例として以下のようなものがあります。
- 顧客が有利になるような借り換え
- 緊急に医療費が必要な場合や社会通念上必要とされる費用の貸し付け
- 配偶者の年収と合わせた年収の3分の1以下になる貸し付け
- 個人で事業を営む人に対する貸し付け
顧客が有利になるような借り換えとは、おまとめローンや借り換えローンなどのことを指します。この場合、ローンを一本化したり借り変えたりすることで返済の手間を減らしたりや利息を抑えたりすることができることから、顧客が有利になると言えます。
また、医療費や社会通念上必要な費用など、お金が無いと困るような場合にも総量規制の例外として貸し付けが受けられることがあるということですね。それから、個人事業者が事業者ローンなどを利用する場合も、総量規制の例外として扱われます。
これを知っておくと、緊急時だけどもう年収の3分の1近くお金を借りているからこれ以上借りられない、と不安になることが無なくて済むという利点があります。
それから、例外の貸し付けとして考えれば、自身に収入が無い専業主婦でも配偶者の年収と合わせて貸し付けを受けることもできます。ただし、その際には配偶者と婚姻関係にあることがわかるような書類や、配偶者の同意書が求められますので、自分だけの判断で借り入れができるわけではないことは知っておきましょう。
ちなみに、これを配偶者貸付と呼びます。ですが、これらの決まりごとがあることを踏まえて、専業主婦は融資の対象としていない貸金業者も多くあります。
それから、例外が認められるには返済能力があると判断されることも必要ですので、いつでも例外として扱われるわけではないことも理解しておきたいものですね。
嘘を申告しても無意味です!借入総額をチェックする仕組みをご紹介
ここまで読まれて、必要なお金を借りるにはちょっと足りない感じがするから、申し込みの際に年収の欄を水増しして記入したり、現在の借り入れの部分を少なめに記入したりすればいいのではないか、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらそれは無意味だと言えます。
なぜかというと、法律で定めているくらいですので、それをチェックする体制がきちんと整っているからです。
では、貸金業者はどのようにして利用者が借り入れをしているお金の総額をチェックしているのか、見ていきましょう。
書類で裏付けを取る!
貸金業法の決まりによると、以下の場合には、審査の際に収入を証明するための書類の提出が求められます。
- 1か所の業者での貸し付けが50万円を超える場合
- 複数の業者での貸し付けの総額が100万円を超える場合
収入証明書類とは、源泉徴収票や所得証明書などのことです。貸金業者は、提出された書類を元に、新たな貸し付けをした場合利用者の借入総額が年収などの3分の1を超えることにならないかをチェックします。そのため、年収を偽って記入しても嘘がバレてしまうのです。
個人信用情報機関で信用情報をチェック!
また、現在の借り入れ状況については、情報が集められている機関を通して確認をします。
個人が融資を受けたりクレジットカードを利用したりといったお金の借り入れや返済などに関する情報である個人情報は、個人信用情報機関というところで管理されていますので、申し込みを受けた業者が情報を照会することで、利用者の借り入れ総額を知ることができます。
キャッシングを申し込む際には、個人信用情報機関に情報を提供することや、個人信用情報機関の情報を照会することに対しての同意が求められます。それに同意しなければ、審査を受けることができません。
法律に関わることですから、業者もきちんと体制を整えているわけですね。
また、貸金業者は法律に関する理由だけで利用者の借り入れ総額をチェックしているのではなく、その人にお金を貸していいかどうかの判断材料としても使われています。では、どういうことか、もう少し詳しく見てみましょう。
年収に対する借り入れ総額の割合は低い方が審査上有利です
年収が300万円の人が10万円お金を借りるのと、100万円お金を借りるのとでは、どちらが返済がしやすそうだと思われますか?
そう聞かれたら、誰もが10万円借りた時の方が返済がしやすそうだと答えるのではないでしょうか。
これは、審査担当者が判断する場合も同じで、年収に対して借り入れしている金額の割合が低い人の方が、返済がしやすいのではないかと思われます。
もちろん、それだけで審査に通るかどうかや利用限度額が高くなるかどうかが決まるわけではなく、他にも勤務形態や勤務先、自宅の状況など複数の項目を見て最終的に判断するわけですが、年収に対する借り入れ総額の割合が低い方が審査上有利であることは言えます。
貸金業者としても、貸したお金が返って来ないと困るわけですから、その人が返済できそうかどうかを見極めたうえで審査に通すかどうか、それからどれくらいの金額を貸すかを決めているのです。お金を貸してもらうには、返済能力があると認められることが大切なんですね。
だからこそ、総量規制によって自身が借りられるのは最高でも年収の3分の1であることを知っておき、その金額を絶対に超えないようにすることが申し込みの際に大切になってきます。
総量規制について知らないと、年収に見合わない借り入れ希望金額を記入してしまい、審査上損をすることも考えられるわけですね!
総量規制に従っていない業者は違法業者!
ここまで見てきたように、法律によって個人が借り入れできる金額には上限が設けられており、なおかつそれをチェックする仕組みもあります。それなのに、総量規制の範囲を超えて融資を行っている貸金業者があるとすれば、それはおかしいですよね。
そのような業者は違法業者、いわゆる闇金なので、借り入れをすると後で法外な金利を請求される、滞納すると厳しく取り立てられるなどの不利益を被ることがあります。
そういった意味で、総量規制について知っていることは、融資を受ける人の安全を守るためにも役立つわけです。
だから、知らないと損をすると言えるんですね。
審査なしでお金を貸せる、誰にでも融資をするなどと謳っている業者などは、融資をすることで総量規制の決まりに反するかどうかをチェックしないままお金を貸そうとしていると考えられるので、そのような甘い誘い文句で融資を持ちかける業者には絶対に申し込まないようにしましょう。
1か所の業者からの借り入れが50万円を超える場合など、条件によって収入証明書類の提出が求められますし、またキャッシングを申し込んだ際には個人信用情報機関に個人情報の照会が行われることによって、利用者がいくら借りているのか、貸金業者がチェックできる仕組みになっています。
貸金業者でない銀行では法律の制限はなくても返済能力が見られます
」
見出しではわかりやすく例として銀行を挙げましたが、貸金業者ではなくてもお金を貸している金融業者があります。それが、銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫です。
これらの貸金業者以外の金融業者でも、カードローン商品やキャッシング商品などが扱われています。では、これらの業者の場合は総量規制の影響を受けるのかというと、貸金業者ではないので関係ないというのが答えになります。
だったら、貸金業者以外を借り入れ先に選べば年収の3分の1を超えるお金を借りられるのかというと、可能性はありますが多くの場合難しいと言えます。
では、そう言える理由を確認しましょう。
融資できる金額に上限が無いのはあくまで法律上!
貸金業者以外の所からお金を借りる場合、融資できる金額に上限が無いことになりますが、それはあくまで法律上の観点から、ということになります。
銀行カードローン商品などの貸金業者以外が提供する商品であっても、申し込みの際に審査を受けて通らなければお金が借りられないのは貸金業者で借り入れをする場合と同じです。
では、何のために審査が行われているのかというと、お金を貸したとして申し込み者が本当に返済してくれそうかを見極めるため、つまり返済能力をチェックするためです。
高額のお金を貸せば貸すほど返済が難しくなるのは当然のことですので、いくら貸金業者以外の金融機関が提供する商品であっても、いくらでも貸せるというわけではありません。
実際は銀行でも年収の3分の1という数字が一つの目安に
では、本当に銀行などの貸金業者以外の金融機関でも年収の3分の1という数字が目安とされているのかについて、具体的な商品を元に確認してみましょう。
ここでは銀行のカードローン商品を例に挙げて確認しますが、銀行などの商品の場合、単純に最大の利用限度額のみを提示しているものと、年収に対していくらまで借りられると細かく条件を定めている商品とがあります。
例えば、以下のような商品では、最大利用限度額のみが示されていますので、いくらまで借り入れができるのかは審査を受けてみないとわからないことになります。
銀行名と商品名 | 最大利用限度額 |
---|---|
オリックス銀行カードローン | 800万円 |
イオン銀行カードローン | 800万円 |
みずほ銀行カードローン | 1,000万円 |
三菱UFJ銀行カードローン「バンクイック」 | 500万円 |
三井住友銀行カードローン | 800万円 |
楽天銀行スーパーローン(カードローン) | 800万円 |
それに対して、以下のような商品では前年度の年収によって借り入れができる金額が決められますので、ある程度借り入れできる金額の予想がつきます。七十七銀行の例を見てみましょう。商品名は「77カードローン」です。
前年度税込み年収・申告所得(自営業の場合) | 最大利用限度額 |
---|---|
600万円以上 | 300万円 |
400万円以上 | 200万円 |
300万円以上 | 100万円 |
150万円以上 | 50万円 |
これをご覧いただくと、年収が低い場合は年収の3分の1までという数字が目安となっていることがわかりますね。年収が高い人の場合、生活に余裕があると考えられるので、それよりも割合の高い年収の2分の1が目安になっているということです。
貸金業者以外からの借り入れでも返済能力が考慮されます
貸金業者でもその人が返済ができそうかどうかを見てから審査結果を決めますが、それは貸金業者以外からの借り入れでも同じです。返してもらえないと思われるお金を貸すことはしませんから、やはり法律によって決まってはいなくても、目安となる数字はあるということですね。
銀行などの貸金業者以外の金融機関では、収入が多く生活に余裕がありそうな人にはより多くの割合のお金を貸すといったことも可能ではありますが、返済能力が考慮されることに違いはありませんので、それほど高額のお金を借りられるとは考えない方がいいでしょう。
貸金業者と大きく違うのは専業主婦でも借り入れが可能なこと!
総量規制の影響を受ける商品かどうかで最も影響があるのは、専業主婦の借り入れです。先ほども確認したように、総量規制によると年収が無い専業主婦が貸金業者でお金を借りるには、例外の配偶者貸付を利用するしか方法がありません。
ですが、実際のところ大手消費者金融は全て専業主婦の利用はできないとしていますし、また中堅消費者金融・小規模消費者金融でも、ごく一部を除き専業主婦には融資をしていないのが事実です。また、借りる側からしてみても書類の準備が大変なので、敬遠したいかもしれませんね。
その点、総量規制の影響を受けない銀行のカードローンやキャッシング商品を始め、信用金庫や信用組合の商品の場合、専業主婦でも借り入れができる場合が多いのです。とはいえ、全ての商品で専業主婦の利用が可能なわけではなく、商品ごとの取り決めによります。
先ほど例に挙げた銀行カードローン商品の場合、専業主婦の利用に関しては以下のようになっています。
銀行名と商品名 | 専業主婦の利用 |
---|---|
オリックス銀行カードローン | 不可能 |
イオン銀行カードローン | 可能だが最大利用限度額は50万円に制限 |
みずほ銀行カードローン | 可能だが最大利用限度額は30万円に制限 |
三菱UFJ銀行カードローン「バンクイック」 | 可能 |
三井住友銀行カードローン | 不可能 |
楽天銀行スーパーローン(カードローン) | 可能だが最大利用限度額は50万円に制限 |
このように商品ごとに取り決めが違いますので、確認してから申し込みをするようにしましょう。また、配偶者に安定収入があることも利用条件となりますので、その点もチェックが必要です。
一部利用できない商品があるにしても、専業主婦の人に限って言えば、貸金業者からキャッシングをするよりも銀行などからお金を借りる方法を考えた方が、借り入れ先が見つかりやすいのは確かです。
総量規制には、こんな影響もあるんですね。
それなら貸金業者以外のところでキャッシングをすればいくらでも借りられるのかというと、そんなことはありません。どの業者でも返済能力をチェックしていますので、それに見合っただけの額しか借りられないことは知っておきましょう。
ただし、専業主婦の場合は総量規制の影響を受けない貸金業者以外の金融機関からの方が、借り入れできる可能性が高いことは確かです。
法律上の上限は年収の3分の1までだが返済できる金額のみを借りよう
貸金業者ではない銀行などの場合は年収の3分の1を超えて借り入れができる可能性があることはありますが、返済能力に見合っただけしか借りられないのはどこを借り入れ先に選んでも同じです。
また、利用者からしても、借りたお金にはその商品の金利に合わせた利息を付けて返さなければいけませんから、借り過ぎは自分の首を絞めることにも繋がります。
そういった意味でも、また返済しやすい状態にあると考えてもらえるほど審査には有利であることからも、総量規制の影響で年収の3分の1が限度であることを知った上で、それよりも低めの金額を希望するようにしましょう!
【参考ページはこちら】
年収額の3分の1以上のキャッシングを停止させないためには?
ですが、返済能力に合った金額しか借りられないのはどこから借り入れをしても同じですので、返済できるだけの、本当に必要なお金だけを借りるようにしたいものです。
総量規制は多重債務者を出さないことを目的として定められたのですが、利用者が困らないよう医療費や事業費などは例外とするといった措置もありますので、返済能力があると認められればどうしても必要なお金の場合のみ年収の3分の1を超えて借りられることもあります。