ジェームズ・グッドナイトという人物をご存知でしょうか。彼はIT会社を起業して成功し、億万長者となった人物です。
最初は、大学の課外活動の一環で始めたソフトウェアがどんどんと人気を博し、最も巨大なソフトウェア会社へと成長していきます。
その過程では、労働環境の悪い職場でのプロジェクトやできたばかりの会社の役員が次々と辞めていくと言う危機的な状況を経験します。しかし、そんな状況も後には会社経営の糧とし、企業をどんどん成長させていきます。
現在フォーブズ誌の「アメリカで最もリッチな人物」の特集では毎年30位入りを果たし、セレブとしての恩恵を十分に満喫しているグッドナイト氏。彼の成功の秘訣を見ていきましょう。
ジェームズ・グッドナイト氏の生い立ち
ジェームズ・グッドナイトはアルバート・グッドナイトとドロシー・パターソンの間にノースカロライナ州のサリスベリーで1943年の6月6日に誕生します。
彼は12歳になるまでノースカロライナ州のグリーンソボロで育ち、彼が12歳の頃、彼の家族が同州のウィルミントンというまたしても小さな町に移住します。
小さい頃、彼の父親が経営していたハードウェアストアでよくお手伝いをしていたため、コンピューターに強くなり、彼の学校でのお気に入りの教科は数学と化学になりました。
彼はニューハノバー高校に通い、素晴らしい教師に囲まれて高校時代を送ります。また、彼はスポーツにも秀でており、バスケットボールのチームのスタープレイヤーとして活躍しました。
コンピューター・プログラマーへの道を確信
そして、グッドナイト氏のコンピューターへの道は、ノースカロライナ州立大学の二年生だった頃、突然開けます。
当時彼は初めてコンピューターのクラスを受講し、その時のことを彼はこう語っています。
「電球に急にライトがついたように、僕はマシンになにか人のためになることをさせる事が大好きになったんだよ。」
と。そして次の年の夏、彼は経済農業学部でプログラムを書く仕事を手に入れます。そこで、コンピューターの仕事を更に好きになり、コンピュータ・プログラマへの道を進もうと決意するのです。
大学時代、彼はタウ・カッパ・エプシロンというフラテニティに所属し、大学生活を謳歌します。
フラタニティのOBとしてのアイデンティティが強く、ビジネスで成功してからも新しいフラテニティハウスの建築に寄付するなど、母校のフラテニティに愛着を持っています。
グッドナイト氏のキャリア
アポロプロジェクトへの参加
その後大学院へ進学したグッドナイト氏は1968年に統計学の修士号を取得します。
その時、ちょうどアポロ一号が月へ人間を派遣したことが話題を呼び、彼はその話題に人よりも大きな興味が湧いたのです。
そしてアポロを月へと送った会社にアプローチしました。
彼のプログラミングのスキルがアポロの宇宙カプセルとのコミュニケーションのための電子機器を作成するポジションに必要なスキルと一致したため、当時アポロプロジェクトを遂行していたジェネラル・エレクトリック社への入社へとこぎつけ事が出来たのです。
しかし彼がアポロプロジェクトで働いている間に会社の離職率が50%以上となり、その事が彼の会社の将来性への先見を曇らせます。
仕事自体は楽しかったものの、職場環境はとても厳しく、従業員はほとんど敬意を払われずに扱われたため、彼はプロジェクト終了後、会社を去ることにします。その時の労働環境について、彼はインタビューでこう語っています。
「彼らはプログラマーは創造性のある仕事ではなく、機械と一緒だと思っているようだった。」
と。
そしてアポロプロジェクト終了後、ノースカロライナ州立大学へ戻り、統計学の博士号を取得します。しかし、このGEでの彼の正社員としての経験は、後に彼の経営に大きな影響を与えることになるのです。
再び学校へ
博士号取得の過程で、グッドナイト氏はノースカロライナ州立大学の同じ大学院生で、現在はIBMに勤めているアンソニー・バールと出会い、彼のチームでプログラマーとして働きます。
この頃、ちょうど彼の大学の統計学部全体がアメリカ南東部の大学全ての農業統計データを集めた研究に従事していました。
そしてそれを見たグッドナイト氏とバール氏は、どんな種類の統計データにも対応できるプログラムを書いたらいいのでは無いかと思いつき、SASと呼ばれる統計データ専用プログラムを開発しました。
翌年には大学の国からの予算が不足しており、彼らのプロジェクトは危うくなってきましたが、大学側を説得し、なんとかプログラム開発を続けられるようこぎつけました。
SAS誕生
そして、このプロジェクトは何とか継続が決定し、グッドナイト氏はこのプロジェクトのためにSAS機構を立ち上げます。そして1976年には、それを世界で最も大きい私有のソフトウェア会社へと転向させるのです。
2004年には、フォーチュン500にランクインされている大企業の98%はSASプログラムを使用して様々なタスクやデータマイニング、ウェアハウシング、分析などを行っていました。
同年にはグッドナイト氏の資産は29億ドル、日本円にして2900億円にも上り、フォーブズの「世界中で最もリッチな人々」リストでは世界中で170番目にリッチな人物として取り上げられたのです。
グッドナイト氏は通常のビジネスの経営方法を無視して成功したため、一般に語られている経営方法ではなく、自分達なりにどのように会社を運営するかという独特の方法を確立していました。
そしてその慣習にとらわれない経営方法が、多くの従業員や顧客の熱烈なファンを作っていったのです。
会社の危機?!
1976年にはグッドナイト氏とバール氏の会社は120ものクライアントを抱え、SASファンも急増していました。
しかし、数年後にはバールが彼のビジネスシェアをグッドナイト氏に譲り、また、当時ビジネスパートナーであったジェーン・ヘルイグもその数年後にビジネスシェアを売却してしまいます。
残ったのは、ビジネスパートナーであるジョン・サルとグッドナイト氏の二人。
サル氏もほとんどビジネスの運営をグッドナイト氏に任せていたため、グッドナイト氏が一人で運営していたようなものだったのです。そこで会社の危機を感じたグッドナイト氏はSASの商品の幅を広げようと、更に多くのプログラマーを雇用します。
また、ビジネスパートナーが去ってしまい、人々の行き先不安な心情を察したグッドナイト氏は、気分転換を図り、1980年には本社がノースカロライナのキャリーという町に移され、そこに200エーカーの巨大な土地を購入し、巨大な本社を創設するのです。
そして人々の不安とは裏腹に、1976年から20011年にはSAS社の成長率が毎年二倍ずつになり、ついに十億ドル(一千億円)のマイルストーンを達成したのです。
従業員と顧客に奉仕する
SAS社は、急激な成長を遂げたことで世間から注目を集めただけでなく、グッドナイト氏の伝統を打ち破るような、斬新的な経営方法が話題を呼びました。
一番初めからSASソフトウェアは購読ベースでライセンスを購入し、毎年それを更新するというものでした。
当時は永久ライセンスが通常の手法であったため、彼のやり方は業界からの注目を集めました。そしてこのビジネスモデルにより、グッドナイト氏は新しい会社経営の方法が必要でした。
永久ライセンスではなく、購読ベースであるため、顧客との強い信頼関係を保ち、購読を更新してもらわなければならないからです。
また、SAS社のポリシーは営業とマーケティングにかかるコストを削減し、業界平均が10~18%程研究・開発に費やしていた頃、SAS社は25~30%の収益を費やしていました。
この斬新な経営手法の結果、2004年にはSASソフトウェア社は98%の顧客リピート率を記録したのです。グッドナイト氏の開発とソフトウェア商品の完成度に従事し、顧客にSAS社のソフトウェアを使ってもらい、業界のトップに上り詰めることができたのです。
また、SAS社の当時斬新だったポリシーが、自社の従業員にも奉仕するというもので、従業員が働きやすい環境を徹底して作り、それが保たれていることを定期的にチェックしていました。
このポリシーは、グッドナイト氏がアポロプロジェクトの卑劣な労働環境で働いていた時の苦しみを自社の従業員に味わせたくないという思いから、始まったものでした。
そして現在ではフォーブズのアメリカで最もリッチな人物30位以内に常連ランクインしており、セレブとしての地位を確固たる物にしているのです。
まとめ
大学の課外活動のために作成したソフトウェアがどんどんと人気を博し、私有の企業の中では最大のコンピューター企業とまで発展し、大企業の社長となってしまったグッドナイト氏。人生には、本当に思わぬところにまでチャンスが転がっているのですね。
しかしそのチャンスを生かすかは本人次第。彼は過去に経験した会社での辛い思いを生かし、自社では従業員の働きやすい環境を作ったり、他のビジネスパートナーがどんどん辞めて行ってしまっても、自分の手で会社を斬新な経営方法で引っ張っていきます。
その結果、従業員からも顧客からも重厚な信頼を置かれ、会社の熱烈なファンまで増えていきます。過去の辛い状況を「未来のいいこと」に変える。そんなグッドナイト氏のエネルギッシュさと前向きな姿勢からは私達も学ぶことが多くあるのではないでしょうか。
【参考URL】http://www.referenceforbusiness.com/biography/F-L/Goodnight-Jim-1943.html
http://www.getnetworth.com/tag/james-goodnight-bio/
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Goodnight
http://www.bornrich.com/james-goodnight.html