リリアンヌ・ベルタンクールという人物をご存知でしょうか。日本では知名度があまり高くないかもしれませんが、フランスでは最もよく知られているビリオネアであり、ソーシャルライトのうちの一人です。
ソーシャルライトとは、社交界で積極的に活動する女性のことで、エンターテイメント性があり、チャリティーや社会活動などを積極的に行っている富裕層の人物を指します。
そんなソーシャルライト、ベルタンクール女史。日本でも有名な化粧品会社であるロレアルの設立者であり、コーヒーで有名なネスレの大株主でもあるのです。
母親が五歳の時に他界し、父親と強い絆で結ばれていましたが、そんな最愛の父も1957年に他界してしまいます。
そして父親から受け継いだ富で大富豪となり、富のほとんどは父親から受け継いだロレアル社の株式と、ロレアル社が国営化される際に引き換えとして受け取った3%のネスレの株式からのものでした。
その後彼女は様々なスキャンダルが大々的にメディアに取り上げられ、スキャンダラスなライフスタイルを送っているソーシャルライトとして取り上げられます。しかし、英語版メディアでは取り上げられていない彼女の一面がいくつもあるのです。
そんな激動の人生を送ってきたベルタンクール女史。彼女の一生を追ってみましょう。
リリアンヌ・ベルタンクール女史の生い立ち
リリアンヌ・ベルタンクールはフランスのパリでルイーズ・マデリン・バーセとユージーン・シュラーの間に一人っ子として生まれました。彼女が5歳の頃、母親が他界します。
父親は後に何度か違う人とデートをし、再婚しますが、父親が誰と付き合おうと、ベルタンクール女史は常に父親と強い絆と信頼で結ばれていました。
15歳の時に父親の会社で見習いとして働き始め、そこで化粧品の調合をしたり、シャンプーのボトルにラベルを貼ったりする仕事をして働きました。
結婚と最愛の父の死
1950年に彼女はフランスの政治家である、アンドレ・ベルタンクールと結婚します。夫であるアンドレはフランス議会で議長を務め、第二次世界大戦ではナチスと協力していたファシズム信仰主義者のグループである「ラ・カゴール」の一員でもあったのです。
結局第二次世界大戦は終了し、免責されたナチスとともにラ・カゴールのメンバーも解散を余儀なくされ、ナチスに関連した人々が社会的に肩身の狭い思いをする中、二人はなんとか、セーヌ川沿いに建てられたアート・モダンマンションに落ち着きます。
そして、1957年にはずっと強い絆で結ばれていた最愛の父が他界してしまいます。ベルタンクール女史は悲しみに打ちひしがれ、しばらくは辛い日々を過ごします。しかし、それと同時に彼女は父親からのロレアルでの遺産を受け継ぎ、そしてロレアルの大株主となるのです。
1963年にロレアル社は株式公開されたものの、ベルタンクール女史がほとんどの株式を保有していました。
1974年のフランス大統領選挙の後、ロレアル社は国営化され、その際にベルタンクール女史は3%分のネスレの株と引き換えにロレアル社の国営化を認めるのです。
2012年12月31日には、ベルタンクール女史は30.5%という大きなシェアのロレアルの株を保有しており、ネスレのシェアも30%以上にまで拡大しました。
ベルタンクール女史はそれまで形式上重役としてロレアルの会社の中での地位についていましたが、2012年2月には役職を引退し、彼女の孫であるジョーン・ビクターに重役を任せます。また、ベルタンクール女史の娘と娘の夫も同時に重役として就任するのです。
ベルタンクール女史のライフスタイル
社交界でも一際注目を集めているベルタンクール女史のライフスタイル。彼女のスキャンダラスで刺激的ななライフスタイルを覗いてみましょう。
スキャンダラスな私生活
リリアンヌ・ベルタンクールはフランスで常に最も話題になっているソーシャルライトと言えるほどの知名度を誇っています。
彼女の富のほとんどはロレアルの株式とネスレの株式から来ており、残りの富は雑誌や新聞の一面に掲載されている次々に起こるスキャンダルから来ています。
そのスキャンダルの中でも最も悪名高いのが、若い写真家を巡って娘との法的論争を起こしたことや、ニコラス・サルコジ大統領に対する違法の寄付を行った可能性があるというスキャンダルなどで常に世間を騒がせています。
その他にもフランスのバトラーであるパスカル・ボネフォイとの不適切な内容を含むビデオが公になったことや、フランコゼ・マイヤーからの絵画を含む違法寄付、金銭トラブルを巡っての法的論争、その他フランスでの政治的なスキャンダルなど。
彼女のスキャンダルの報道は留まるところを知りません。
ベルタンクール女史の意外な一面
しかし、そんなスキャンダラスで自由奔放な彼女の性格とは裏腹に、英語版メディアでは無視されている彼女の人生の意外な一面もあるのです。
彼女は人々のお手本となるような勤労、自律を実践しています。80歳となった現在でも朝は3キロのジョギングに赴き、毎日4時起きで水泳、サイクリング、ウォーキングなどの健康に考慮した運動を行っているのです。
また、彼女は寛大な慈善事業家でもあり、科学リサーチへ多額の資金を費やしたり、フランスの学生への奨学金を提供したりと様々な社会活動も行っているのです。
慈善事業家としてのベルタンクール女史
ベルタンクール女史のスキャンダラスなライフスタイルとは裏腹に、彼女は慈善事業家としても活躍し、社会に貢献しています。
自身の資産を社会のために役立てる
1987年に、ベルタンクール女史は彼女の夫と娘と一緒にベルタンクール・シュラ―基金を設立しており、医療の発展や文化的・人道的プロジェクトのサポートを行っています。
その基金は150億ユーロにも上り、毎年の予算は15億ユーロにも上っています。そのうち55%は科学・教育・研究に費やされ、33%は人道的・社会的プロジェクトに、そして12%は文化・アートのために利用されています。
また、基金は様々な部門で優秀な功績を遺した人々に贈られる賞も用意しており、毎年受賞者のサポートも行っています。
「生活科学リリアンヌ・ベルタンクール賞」は45歳以下のヨーロッパの生物研究で優れた功績を残した人に贈られるもので、ヨーロッパの中でもトップを誇る賞となっているのです。
受賞者は約25万ユーロが授与され、研究予算に充てることができます。
また、最近ではモネ・マーモッタン・ミュージアムにてモネの絵画を集めて展示するサポートなどを行っています。
一方で、ベルタンクール氏は「ブラック・プラネット・アワード」という最も環境に優しくないセレブに贈られる賞を受賞してしまい、ロレアルでの子供の労働や水資源の無駄遣い、業界での独占などが問題となっています。
まとめ
スキャンダラスで自由奔放なイメージで悪名高いソーシャルライト、ベルタンクール氏ですが、自身の資産を寄付に回して社会のために役立てたり、自立・勤労を心がけ、懸命にやるべき事のために時間を費やしたりと、メディアでは紹介されていない一面も多くあります。
「当たり前のことをしっかりとやる」これが彼女が父親から譲り受けた富を譲り受け、多くのセレブの中から支持を得ている秘訣ではないでしょうか。
「当たり前の事を当たり前にやる」、できそうで、なかなかできないことですよね。
それにしても、スキャンダルもかなり多くメディアで取り上げられているベルタンクール氏。
セレブの中にも色々な形でセレブとなった人々がいるのだなぁと感じさせられます。
現在80歳ですが、まだまだ日々ロレアルの重役としている娘や孫にアドバイスを提供したりと忙しい日々を送っています。これからも元気で、活躍して欲しいですね!
【参考URL】http://en.wikipedia.org/wiki/Liliane_Bettencourt
http://www.bornrich.com/liliane-bettencourt.html