イノヴェーション。この単語をここ数年でたくさん聞く様になりました。外国のニュースを訳しているとこの単語がよく出てきて、この単語を避けて文章を作ってみると随分野暮ったくなります。

だからこそイノヴェーションという言葉がそっくりそのまま使われているのでしょう。技術革新よりもなんだかカッコイイですし、その言葉を使うよりも、もっと革新している装いがあります。

筆者は生まれてからもうすぐ30年くらい経ちそうな年齢になっています。その間に日本では勿論大きなイノヴェーションは起きてきたし、私もそれを見てきました。

これからも新しい技術の発展や取り組みにより、生活様式や表現手段等様々な事が変わっていく事でしょう。

それにより古いメディアの淘汰が行われていくのですが、最も頻繁に世代交代が行われているのは、記録媒体ではないでしょうか。

ビデオだったものがDVD、そしてBD。レコードだったものがCD、そしてMP3へ。音楽配信サービスも開始し、数年後もしかしたらデータすら持ち運ばない時代が当たり前になっているかも知れません。

そして最後の砦だった“本”も数年前にいよいよ電子書籍化が始まり、規模が大分縮小しました。本が歩んできた文化と歴史を守りたい気持ちと、それに伴って来た産業が受ける構造変化による一部の衰退がうかがえます。

たしかに便利さと引き換えに大切な物を失うような気持ちになりますが、考えてみればメリットは一杯ある筈です。資源の使用を抑える事も出来るし、購入費用も全体で見れば安くなるかも知れません。

そんな古いメディアの“本”が解体されつつある中、いまだ残っているもの、それはお金です。

カード払いやスマホでの決済が可能になり、都市では現金以外の手段が定着しました。しかしお金というのは人類有志以来ずっと変わらず残っている物であり、これから先も無くならないものだろうと私も思っていました。

しかし本格的にお金を廃止していこうという考えを持つ人が沢山居る事を知り、驚きました。本当にお金が無くなる時がすぐそばに来ているのかも知れません。

現金は不要か、否か？

ドイツのデジタル分野での産業連盟Bitkomが行った現金に関するアンケートで、どのくらいの人が「現金が全く、またはほぼ使わない状態で社会生活を送る事を想像出来るか」を調査したものがあります。その結果は以下の通り。

1. 全体の36％が想像出来ると回答
2. 14歳～49歳の間ではほぼ50％以上が想像出来ると回答

　
実際の紙幣、貨幣は、ほぼ日常的に使用されている社会の支払い手段であり、96％の人が「買い物の際現金を使用している」と述べ、56％がもっとも好ましい支払い手段であると答えました。

現金廃止論を推す経済学者たちと反対する銀行たち

幾つかの経済学者は、現金の廃止を推しています。ドイツの経済学者Peter Bofingerは「現金はすでに古い存在であって、過剰に溢れている」と意見を示しました。

紙幣、貨幣が無い社会は、違法労働や未払いの税金、ドラッグを消滅する事が可能です。そして発券銀行は、金融政策を行う際、これまでより非常に楽になります。

勿論ドイツの銀行たちは、現金の廃止論には反対の立場を取っています。

新しいテクノロジー

「ドイツは現在、現金の無い社会から距離がある状態であると言える」とBitkomの代表Ulrich Dietzがアンケートの結果を元にそう答えました。しかし、時代は現金廃止へ明らかに進んでいるとも言いました。

強い経済成長は、支払いの機会の無い会計システム“NFC-Technologie”の実現を見据える事ができます。

NFCは“Near Field Communication”の略称。これはデータをとても身近な距離に書き換えるテクノロジーです。例えばこれは、

1. クレジット
2. デイビット
3. スマートフォン

　
などでの支払いの為に使われます。利用者は支払いの際、カードを端末装置に差し込む必要が無くなり、ただその前に持って立っているだけで良いのです。

先日、ドイツで有名なスーパーマーケット“ALDI”は、近い将来、店の支払いレジをこのNFCを使った物にすると明らかにしました。

Bitkomの見積もりによると、ドイツ全体で約60000台のNFCが反映されている端末があり、その内の8％が小売業で使われているとのこと。来年この数値は恐らく勢いを増して、使用されている規模が大きく拡大されるだろうと言われています。

…と、現金を使用する機会を減らそうと産業連盟が力を注ぎ、その為の技術革新が行われています。そうなると近い将来、大多数の人は現金の支払いをしなくなるのかも知れません。

完全には無くならないでしょうが、現金のみの支払いしか行っていない店舗の立場が苦しくなる、なんてことも起きそうです。

このニュースはドイツメディアのものですが、海外の人はどのようなリアクションを送ったのでしょうか。一部コメントを抜粋して、幾つか紹介してみたいと思います。

現金廃止は人類の進歩？

このまま現金が無くなってしまったら一体どうなるのでしょうか？経済的な側面の影響は残念ながら想像する事は出来ませんが、個人レベルな話だと、消費活動が上がってしまう恐怖があります。

やはりカード等の支払いは、お金が減っていくという感覚がどうしても薄いし、それにより購入総額への関心が薄らいでしまい、気付いたら頭を抱える程の支払いが待っている…なんて事が起きそうですね。

【参考URL】http://www.spiegel.de/wirtschaft/service/bargeld-jeder-dritte-koennte-auf-muenzen-und-scheine-verzichten-a-1038137.html

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