エジプトのカイロ在住時代、ある日現地の新聞でドバイのエミレーツ航空のCA募集広告を見つけました。試験会場はカイロマリオットホテル。話のネタ半分に、私も受験しに出かけました。
当たり前ですが、エジプト人の若者たちが数百人集まっていました。外国人受験者は私ひとりだけでした。
全員が香水をぷんぷん香らせ、ミッキーマウスやハート模様のネクタイ、ショッキングピンクのジャケットなど、それはそれは華やかな装いばかりでした。日本の就職活動のスーツとはあまりにも違っていました。
まずは英語筆記試験。私が「外国人」(イコール「英語ができる」と思い込まれている)ということで、カンニング目的のエジプト人受験者たちがぐっとそばに寄って、私の試験ペーパーを覗きまくっているのをひしひしと感じました・・・。
試験中、マリオットホテルのウェイターたちが紅茶とビスケット、サンドウィッチを受験者たちに給仕してくれていました。バブル時代の日本企業ですら、いくらなんでも入社試験真っ最中に、飲食を提供しなかったことでしょうに・・・。
次は身長と体重のチェック。10cmの上げ底を履いてきていたエジプト人受験者たちはむろん靴を脱がされて身長測定。ことごとく落第しました。
そしてイギリス人のカウンセラーによるメンタルチェック。その次に皮膚チェック。顔に吹き出物、シミがあると即アウトでした。吹き出物だらけだった私はここで落第しました。
非常に悔しい思いをしたのですが、合格した場合のエミレーツ航空の待遇等を聞いて非常に驚いたことはよく憶えています。
基本給は確か15、6万円ですが、ワンフライトにつき結構なお手当が付いたり、メイクアップやワインの知識はプロの講師に学べたりしました。またエミレーツ航空のCAになれば、ドバイの多くのレストランで半額(?)の金額で食事ができます。
現代の欧米や日本ではありえないほど、ドバイではCAがちやほやされ大事にされているなあ、という感想を抱きました。
CAがこれくらい良い待遇なので、もっと華やかな職業であるモデル業もずいぶん贅沢なものなのだろう、と長いこと思っていました。
ところが「グラマラスなモデルの真実」の記事を読みドバイのモデル業の大変さを初めて知り唖然としました。
ドバイの人気ファッション雑誌
ドバイでファッションモデルが活躍できる場は、欧米や日本と何も変わりません。ファッションショーのステージに、広告チラシ(ポスター)、テレビCM、一流ブティックなどなど。ファッション雑誌もモデルたちの大切な仕事の場のひとつです。
ドバイにも多くのファッション雑誌があり、その主なものには以下があります。
- 「Aquarius(アクエリアス)」
- 「Ahlan」(アラビア語で「ウェルカム」という意味)
- 「Masala!」(ヒンディー語やウルドゥー語で書かれた雑誌)
- 「Grazia」(2013年に日本語版は休刊になったインターナショナル女性ファッション誌)
- 「Harper‘s Bazaar Arabia」
- 「La Moda Dubai」
- 「Style N Dubai」
またオンライン雑誌の「Savoir Flair」などもあります。「Cosmopolitan Middle East」ではオリジナルのアメリカ版、日本版等ではよくセックス特集が組まれていましたが、この中東版ではファッションにフォーカスし内容は大人しくなっています。
こういったドバイのファッション雑誌、もしくはファッションサイトに一通り目を通してみると、ある3つのことに気が付きます。
- 1つ目は「あまり中身がない」
- 2つ目は「白人のモデルばかり」
- 3つ目は「太めの女性が多い」
日本や欧米のファッション雑誌ほどの量と質の記事が書き込まれておらず、ぺらぺらの印象を受けます。
ちなみにドバイに限らず、多くのアラブ人男性はお尻の大きい女性を美人とみなす傾向が強いです。
モデルといえば外国人・・・金髪で青い目の女性がメジャー?
ドバイの女性は表に出る仕事をほとんどしません。女性が人前や公衆の面前で何かするのをあまりよろしくない、と思われています。楽器演奏も踊りも、スポーツもそうです。ベリーダンスも女仲間だけの場か家族の前でしか踊りません。
ドバイのクラブに繰り出してみてください。ドバイ人の男性は大勢見かけますが、ドバイ人の女性はほとんど見ない、いや、全く見ないはずです。
日本もそうですが、ドバイでも白人信仰が強く、モデルといえば欧米人を、という風潮があります。(ドバイ人の男性も金髪で青い目の女性が大好きです)
その上、ドバイ人の女性がモデルというのは、宗教的にも文化的にもなかなかポピュラーにならないのです。また、モデルとしてはグラマラスすぎる体型の女性が多い、というのも一因かもしれません。そういった理由でドバイ人の女性モデルはあまりいないのです。
しかしファッションやブランド好きが多く、このマーケットの需要は高いのです。当然モデルが大勢必要となります。ですので外国から、特に欧米人モデルたちがドバイのファッションモデル業界で必要とされているのも自然のことなのです。
太めでも30過ぎても仕事に困らない!
さて、Gosia Golda氏(MMGイベント会社・マネージメントディレクター)によると、ドバイのモデルは多くのチャンスに恵まれているといいます。
もちろん、パリやミラノといったヨーロッパでモデルの仕事に就いた方が、間違いなくよりよい収入を得られるでしょう。でもそれを分かっている上で、多くの外国人モデルたちはヨーロッパではなくドバイに仕事を求めてやってくるのよ。
ヨーロッパ人のモデルたちでさえも、ドバイに続々とやってくるわ。なぜならドバイほどチャンスが多いエリアはないもの。
30半ばの年齢でしかも(モデルとしては)ちょっとぽっちゃりした体型であるにも関わらず、次から次に仕事が舞い込んでくるのは、ドバイのファッション業界くらいなものよ」
しかし一方で多くのモデルたちは、実際にドバイにやってきて、ヨーロッパのモデル業界に比べて、全てにおいてあまりにも遅れており、まったくプロフェッショナルでないことに驚き、そして失望をしています。
なんでヨーロッパより遅れているの?
179cmの八頭美人、ヴァネッサ・ジーンズ(Vanessa Geens)もその一人。
ヴァネッサはヨーロッパで活躍した後、拠点をドバイに移しました。8年間ドバイで活躍しましたが、多くの点でヨーロッパとドバイのファッション業界の違いを感じました。
その上ドバイではモデルの拘束時間が長いの。午前10時から午後9時まで働かせられるなんてザラにあったわ。
9時に現場入りして10時からスケジュール業務開始。正午にリハーサル、14時にヘアとメイクアップ、17時にドレスリハーサル、ショーのキックオフが21時・・・。
朝から夜遅くまでかかるわりには無駄な時間が多いのよ。要領や段取りが最悪でイライラしたものよ。そのくせ現場を離れることは一切許されず、何もやることが無い時にちょっと抜けてくる、ということもできなかったの。
一方でモデルに食事をさせることもよく忘れられて、本当にひもじい思いをしてふらふらになって働いたわ。
ファッションウィークに入ると、過密スケジュールになったものだったわ。1日に4本ものステージに立つのよ。
1本目のショーでは髪の毛に数百本ものヘアピンを刺されて、別のデザイナーによる2本目のショーでは髪をストレートにされ、3本目ではパーマをかけられ、と髪の毛もしっちゃかめっちゃか・・・。
こんな有様だから当然のごとく、髪の毛はごっそり抜け、まつ毛も眉毛も抜けまくって、しまいには、つるんつるんの魚のような形相になってしまうの。」
大きめのお尻でもノープロブレム!果たしていくら稼げるのか?
ヴァネッサはドバイでのモデルの仕事がいかにタフでクレイジーかまくし立てますが、一方で先ほどのマネージメントディレクターであるGosia Golda氏の言うことも認めています。
ヒップのサイズも然り。ヨーロッパではマックス89から90cmが許容範囲なんだけど、ドバイでは96cmのヒップでもオッケーなのよ。
それにドバイではクライアントに気に入られると、その後モデルの仕事が幾度ともなく入ってくるの。情に深くて約束を守ってくれるのよ。
パリではそうはいかないわ。例えクライアントが特定のモデルを指名しても、その10分後にはそのことをすっかり忘れ去られてしまうのが普通だったもの。」
では一体ドバイのモデルはいくら稼げるのでしょうか。無論、ドバイでもモデルのランキングはあります。
しかしそれを踏まえて、あえて平均金額を出してみると、時給は22ドル(約2600円)。日給は410ドル~685ドル(約5万円~8万3000円)が相場。テレビのキャンペーンモデルに選ばれると、5,500ドル(約66万9000円)の日給がもらえます。
ヴァネッサいわく「ドバイに限らず、世界中のモデルの悲劇は、“モデルも人間だ”ということをよく忘れられてしまうこと。モデルをブッキングすると、そのリスト表にギャラ金額も書かれるから、すっかりお店に出す商品扱いされてしまうのよ。」とのことです。
そのほかのドバイの仕事の給料
ちなみにモデル以外の仕事に就くと、ドバイでは一体いくらぐらいの収入がもらえるのでしょうか。Salary Survey in United Arab Emiratesによると以下のとおりになっています。(※職種、肩書等は混ざっています)
- ファッションアパレル:19,833 AED(約66万円)
- フリーランスファッションスタイリスト:12,000 AED(約40万円)
- デザイナー:23,000 AED(約77万円)
- ペットケア:2,500 AED(約8万3000円)
- 自営業:4,000 AED(約13万4000円)
- バイリンガル:5,125 AED(約17万1000円)
- バイク急送便/デリバリードライバー/公共機関乗り物運転士/タクシー運転手等:5,992 AED(約20万円)
- 電機電子工業関係:7,900 AED (約26万4000円)
- 飲食業/サービス業/旅行業/ケータリング業:8,097 AED(約27万円)
- 事務/受付/秘書:8,323 AED(約27万9000円)
- 貿易:10,313 AED(約34万5千円)
- 製薬関係:10,321 AED(約34万5000円)
- フィットネス/美容/理容 :11,358 AED(約38万円)
- 介護/幼児ケア:12,500 AED(約42万円)
- 工場/製造:13,244 AED(約44万3000円)
- カスタマーサービス/コールセンター:13,507 AED(約45万2000円)
- 出版/印刷:14,103 AED(約47万2千円)
- 教師/教育関係:14,166 AED(約47万4000円)
- メディア/放送/アート/エンターテイメント:14,191 AED(約47万5000円)
- ヒューマンリソース:14,877 AED(約49万8000円)
- 広告/グラフィックデザイン/イベント:14,929 AED(約50万円)
- 広報:14,950 AED(約50万円)
- 会計/ファイナンス:15,333 AED(約51万3000円)
- 販売小売店/卸売15,749 AED(約52万7000円)
- 品質管理/コンプライアンス16,028 AED(約53万6000円)
- マーケティング:16,993 AED(約56万7000円)
- エンジニア:17,118 AED(約57万3000円)
- 建設/建築/インストール:17,390 AED(約58万2000円)
- 建築設計:17,668 AED(約59万1000円)
- インフォメーションテクノロジー:18,475 AED(約61万8000円)
- リクレーション/スポーツ:19,130 AED(約64万円)
- テレコミュニケーション:19,212 AED(約64万3000円)
- 保険関係:20,821 AED(約69万7000円)
- サイエンス&テクニカルサービス:21,446 AED(約71万8000円)
- ビジネスプランニング:21,511 AED(約72万円)
- 自動車関係:21,831 AED(約73万円)
- 金融業(銀行):24,087 AED(約80万6000円)
- 機械修理:25,875 AED(約86万6000円)
- 航空/航空宇宙/防衛:26,319 AED(約88万1000円)
- ヘルス&メディカル:27,869 AED(約93万3000円)
- オイル/ガス/エネルギー/鉱業:29,226 AED(約97万8000円)
- 警備/消防:30,267 AED(約101万3000円)
- 法律:30,615 AED(約102万5000円)
- 不動産:31,218 AED(約104万5000円)
- 政府/軍:32,000 AED(約107万1000円)
- エグゼクティブ&マネージメント:37,302 AED(約124万9000円)
- カウンセリング:60,000 AED(約200万円)
- ガーデニング/農業/漁業:60,500 AED(約202万5000円)
不平不満だらけの外国人ワーカーたち
こういった金額発表を見て、ネット上ではドバイで働く外国人たちが総じて「嘘っぱちだ!」と怒りをあらわにしています。
(※ちなみにドバイ人というのは幹部、社長レベルの役職であるのが一般的であるため、通常「ドバイで仕事や給料の不平不満」を持つのは外国人たちです)
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各職業の平均給料、アジア人雇用者はこんなに貰っていない。
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多くの人はこんなに貰っていないけど、給料交渉の時にこの記事は利用できるかな!?
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ITエンジニアなんだけど4000AED(約13万円)しかもらっていないよ。
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同じ仕事をしても、アジア人の方が給料は安いよね。
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まるで夢の遊園地にいるように見えるけど、実際は多くの人がこんなに貰っていないよ。
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UAEでは同じ仕事、同じポジションでも西洋人とアジア人では貰える給料の額が違う。外に出る金額はすべて西洋人金額だ。
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本当のデータじゃないだろう。
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数字の入力間違いだろうな。
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カザフスタンからUAEに出稼ぎに行く計画を立てている。やはりUAEでは稼げるんだな。今からわくわくしている。
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ドバイで15年働いているCCIE資格取得者だ。3000AED(約10万円)しかもらえないんだが。
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誰が、どの企業がこの記事の金額を従業員に払っているのか、具体的に明記してほしい。
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「50年後の給料予想」の間違い記事だろう。
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この平均給料の根拠はどこからなんだろうな。
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ドバイは給料がいい、という幻想を誇大広告している。
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みんなのコメントがこんなに歩調が合うのも珍しいよな。
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不動産会社に会計士として2年働いているが、給料は2500AED(約8万円)だよ。
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ウェブ開発者として7年間もドバイで働いている。しかし僕の月収は7000AED(約23万円)だけなんだが。
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外国人労働者をもっと増やすために、ドバイのマスコミは嘘を発表しているんだろう。
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気に入らなかったらドバイを出て行けばいいだけじゃないか。
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俺は高学歴だし、大きな企業でそれなりのポジションについている。しかし月収は6000AED(約20万円)。アジア人だからか?
規格外でもドバイではモデルになれる!?
また自分の話で恐縮ですが、私はカイロを去った後、ドバイに渡りました。現地のその某会社の同僚は全員外国人でした。上層部はドバイ人たちでしたが、彼らは「雲の上の存在」でまったく接触はありませんでした。
多くの企業やホテルでもそうでしたが、現場を取り仕切るポジションに就いているのはイギリス人やドイツ人であるのが一般的でした。恐らく英語の流暢さもその要因だったのではないでしょうか。
日本人は特殊なポジションであることが多く、英語が話せない日本人カスタマーやクライアントを相手にするための橋架け(通訳)の立ち位置でした。
中国の田舎からは中国人の若い労働者たちが次々に送り込まれて(?)きていました。最初はまったく英語を話せない彼らでしたが、非常に意欲的で仕事熱心のため、数か月後にはペラペラと喋るようになっていました。(ドバイでの言語は通常は英語)
港には次々と船が到着しインド人やネパール、バングラディッシュ人の男性労働者たちが大量に乗せられていました。ドバイは建築ラッシュであったために、現場工事労働者が必要だったのです。あの灼熱の中での現場工事、聞いただけでもぶっ倒れそうになります。
若いヨーロッパ人たちも大勢働きに来ていました。彼らは割り切っており「3、4年だけドバイで働いてキャリアを作って、その後はニューヨークに移るんだ」というように、あくまでもステップアップのためにドバイで少し仕事をする、と考えていました。
やはり、というかなんとなく人種や国籍による階級社会ではありましたが、周りには外国人の若い仲間ばかりで、毎日朝から晩までいろいろな訛りの英語を耳にしました。
様々な国の話を聞き本当に楽しく、ずっとインターナショナルキャンプ場にいるような感覚でした。
ちなみに給料は東京で働くより若干悪かったような記憶があります。とはいえ、素晴らしい(?)のが日本より、自動的に様々な名目で税金分などが引かれないこと。例えば16万円の給料ならそっくりそのまま16万円をもらえたことですね。
娯楽はあっても文化がない地域だったので長期間住むと飽きてしまいますが、税金フリーというのは気持ちがよく、またドバイで働いてみたいものです。
次回はモデル業ですかね!?ヒップのサイズが大きくても身長が低くても多少太めでも、年齢にトウが立っていても何かしら仕事は入ってくるらしいから!(ベタなオチで恐縮です・・・)
【参考URL】http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?loc=227&loctype=1&job=335&jobtype=3
http://www.arabianbusiness.com/the-truth-behind-glamour–day-in-model-s-life-536451.html
http://gulfnews.com/business/economy/uae-salary-guide-2015-are-you-being-paid-enough-1.1458641
http://www.uaestylemagazine.com/27/top-10-uae-fashion-magazines.html
めちゃんこ忙しいならこんなもんか~なお給料だったな。CAもそうだけど、華やかにみえる世界こそ地獄だったりするらしいからな~。現地ならではの雑誌読みてみたいな。