カトリック総本山であるヴァチカン市国のある国、イタリアでは、政治にもこのカトリック教の影響が少なからず出ていることが多々あります。
「永遠の愛を誓った夫婦が離婚することはご法度」と考えられているカトリック教ゆえ、イタリアでは離婚するのもなかなか容易ではないのです。
イタリアでは別れるのも楽じゃない!
協議離婚ならば、署名と捺印を施した書類を役所に提出するだけでよい日本ですが、ここイタリアでは、離婚はそんなに簡単なものではありません。
離婚自体がここ30数年ほど前にやっと可能になった国ですから、「一度生涯の契りを交わした夫婦が紙切れ一枚を提出することで即離婚できる」というシステムを取ろうと考えないのは当然なのかもしれません。
イタリアでは、夫婦が別れる決心をした場合、
- 1. まず別居という形を取らなければならない
- 2. ある一定期間が過ぎた後、正式な離婚の手続きを取ることができる
この別居期間は一応、正式に別れてしまう前にお互いがもう一度考え直して、よりを戻すことができる“猶予期間”ということになっています。
この間にもし別の恋人ができたとしても、即再婚することは不可能なものの、付き合ったり同居したりすることは問題ありません。
大きな改革!長すぎた別居期間が短縮される
この「一定期間」の長さ、実はごく最近まではなんと3年間でした。
また、別居や離婚の手続きには弁護士を通して裁判所へ提出する公式書類を作成したり、裁判官の前で双方が同意の確認をするための日程を予約する必要があり、それらに要する期間も考慮しなくてはなりませんでした。
しかし世間では、お互いが分かれる決心が固いのになぜ長期間待たなくてはならないのか、という声も以前から多々ありました。
そしてついに2015年4月23日、別居期間がこれまでの3年間から1年間へ、協議離婚ならば最短で6ヶ月と短縮されることとなりました。
時間だけでなく費用も縮小の方向へ
離婚のために費やされる貴重な時間が削減される方向へと進む中、多額とされている離婚費用の面にも少し改善が見られています。
財産分与などの争いや未成年および障害を持つ子供もいなく、裁判に持ち込む必要が無い場合でも、イタリアでは正式書類作成や細かい取決めなどを弁護士を通して行うことが多いため、それにかかる費用は一般に1500~3000ユーロ(約19万5千~39万円)ほどと言われています。
一方、未成年および障害を持つ子供がいてその親権を争ったり、金銭上の不合意がある場合には、裁判と弁護士の費用として最低でも1万ユーロ(約130万円)ほどかかり、訴訟が長引けばその何倍もの費用が嵩むこともあります。
そんな、イタリア弁護士の懐を肥やす離婚システムが、2014年12月から少し変化を見せることとなりました。
未成年および障害を持つ子供がいなく、財産分割において合意に達している場合には、町の市長の下で別居および離婚手続きをすることができるようになったのです。(ただし、結婚時にその由に対する双方の同意が必要)
このように多少簡素化されたイタリアでの離婚は、場合によっては必ずしも弁護士を通す必要はなくなりました。そしてこの市長の元での離婚にかかる費用は、なんと印紙代の16ユーロ(2080円)となり、ローコストの離婚も可能になりました。
このようなニュースに対し、イタリア人たちはどのような意見を持っているのでしょうか?ここでいくつかご紹介することにしましょう。
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家族に関わる社会問題には、必ずといっていいほど教会が口を出してくるんだよね。
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結婚もついに「金銭契約」のようになってきたなあ。
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結婚や離婚が、物質とお金で計られる世の中だ。
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これだと、夫婦のうち経済力があるほうが弱い方を支配しかねないんじゃないか?
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イタリアで結婚するのが面倒になるよね。海外でしたほうが楽だから、私はそうしようかな。
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↑ 私の親戚で、結婚も離婚も海外でスピーディーに済ませた人がいるよ。だからイタリアでは未だ独身ということになっている。
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結婚時に離婚について合意するということらしいけど、もし離婚についての意見が二人で異なったらどうなるの?
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↑ その人とは結婚しないで、他の相手を探すべきじゃない?(笑)
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結婚前の合意って、法的に有効じゃないんじゃないかな?
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↑ 公証人を介せば大丈夫だと思う。お金がかかるけど。
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もっとシンプルに、生涯共に暮らせるパートナーを選べば、そんなことを考えずに生きていけるんだけどね。ま、実際それが難しいんだけど。
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↑ だから上手く相手をハントしなきゃね!
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この法律作ったのって、単なる票集めなんじゃないか?
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結婚する時には、離婚して財産を分けることなんてあまり考えないよね。そんなこと考える人は結構怖いかもしれないけど、もし将来離婚することになったときには、それは賢かったというべきなのかな。
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結婚しない司祭たちが、一般市民の結婚に関してああだこうだ言うのはどういうことなんだろう?
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ローマ市にいる弁護士の数は、あるヨーロッパの国全体の弁護士の数より多いと言うよ。この新法律で彼らの財布も薄くなるのでは?
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考えた末に離婚を決めたなら、一旦別居して再考する猶予期間をもらう必要はないんじゃないのかな。
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↑ そう、本人たちは決心が固いのに、周りの社会や法律が無駄に時間を引き伸ばしているだけだって言うのがわかんないのかなあ。
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こんな煩雑な離婚手続きは、たくさんいる弁護士を儲けさせていくための手段のように思える。
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弁護士は1組の夫婦につき、別居と離婚の2つの手続きで儲けも倍っていうのがおかしい。
賛否両論の新法律
多少簡素化されたように見えるイタリアの離婚に関する新法律ですが、市民の見方は意外とクールなようです。
「離婚」という好ましくないイベントに関するだけに、今後結婚する人たちにとっては、うれしいニュースとなるのか、ならないのかは微妙なところのようです・・・。
【参考URL】http://www.ilfattoquotidiano.it/2015/03/17/divorzio-breve-senato-stralcia-norma-diretto/1514693/
http://www.causadiseparazione.it/divorzio/quanto_costa_divorziare.html
http://www.paradisifiscali.org/paradisi-fiscali/divorzi-in-italia-quanto-costa-dirsi-addio.html
http://www.forexinfo.it/Divorzio-dal-sindaco-ecco-come
http://www.lastampa.it/2014/11/05/italia/i-tuoi-diritti/famiglia-e-successioni/divorzio-pi-facile-per-dirsi-addio-baster-il-sindaco-yQnvO6xwJsKubQmAdyUKhI/pagina.html
イタリア人の印象がみんなジロー〇モみたいな「ヘ~イ」系だったから、離婚にこんなに苦労してたなんて全然知らなかった!男女の話について全部奔放に、というわけにはいかないんだな・・・。たしかにイタリアで結婚するのはイマイチ面倒だと思ってしまう内容だったな~。まず先に離婚のことを考えてる時点でなんか寂しい話なんだけどさw