大正9年より10年おきに実施されている国勢調査では、日本に居住する全ての人を対象に、日本の総人口数及び、年齢・職業・世帯などのより詳しい人口構成の調査を行っています。

最新の国勢調査を見てみると、2015年の日本の総人口数は1億2709万5000人。前回の調査と比べて、日本の人口は96万3000人も減少し、ますます日本の人口は減り続けています。

しかしその反面、日本在住の外国人数は175万人と、10年前に比べて実に10万人も増加しているのです。

少子高齢化と叫ばれ何とか出生数を上げようと、国を挙げての様々な少子化対策が行われています。しかし、出生率を上げる事が出来たとしても、その子供達が社会に貢献する立派な大人に成長するまでには、20年近くかかってしまいます。

そこで、手っ取り早い方法として最近よく耳にするようになったのが、外国人労働者の起用です。

日本に残るため・・・不法滞在を選ぶ外国人

2015年11月18日には、「外国人技能実習制度」の適正化法案と「入管難民法改正案」が参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。これは、人手不足が深刻化している介護分野での、外国人労働者の大幅な受け入れを目的としています。

平成5年より実施されている外国人技能実習制度では、開発途上国の外国人を最長で3年間受け入れ、将来社会に貢献できる技能等を習得してもらう事を目的としています。

しかし現実は、労働者不足が深刻な産業へ「実習」という形で外国人を雇用する、という側面が強くなっているようです。

消える外国人労働者たち

ですが、この制度には深刻な問題が…。それは、実習生として来日したはずの外国人が、どこかへ姿をくらませる事件が急増しているのです。2015年の失踪者数は5803人で、国別に見てみると、

1. 中国人・・・3116人
2. ベトナム人・・・1705人
3. ミャンマー人・・・663人

となっています。2011年から現在までの5年間の失踪者数は、既に1万580人にまで達しています。

勿論、実習生を安価な労働力として悪用する受け入れ企業にも問題はありますが、最近ではこの制度を利用し、不法就労を目的に入国を斡旋するブローカーも存在していると言われています。

2014年の技能実習生の摘発数は全国で961人。2013年比で約3倍にまで増加し、滞在期間が切れても居続ける「不法残留」や実習以外の就労を行う「資格外活動」などの入管難民法違反罪が4割を占めてる一方、空き巣などの窃盗罪で摘発されるケースも少なくありません。

福祉国家の崩壊を招く移民

日本とは全く状況は異なるものの、外国人労働者の起用により、社会構造の崩壊を招いている国は、決して珍しい話ではありません。ここでスウェーデンのケースをご紹介しましょう。

世界一キャッシュレス化が進む国、スウェーデン。現金を殆ど使わなくなったかの国で工務店を営むピュトールさんは、毎週、数枚のクレジットカードを利用して、ATMからお金を引き落とさなければなりません。

多い時には週8万クローナ（約100万円）程を引き落としている理由は、彼が雇い入れた不法就労者への支払いの為です。

スウェーデンには、2015年に16万3000人の難民が押し寄せた上に、東欧諸国出身の何千人もの経済移民が存在します。彼らの大半はスーツケース1つで移住、スウェーデンに到着した時には破産寸前です。

経済的に依存している家族を背負っている彼らには、時間の掛かる労働許可などの申請を避け、不法就労という道を選択します。

また、難民としてスウェーデンに滞在している移民も、難民申請が正式に受理されるまでには約2年かかり、この間は1日8ドル（約900円）と住宅費用が支給されるだけとあり、不法就労という選択を選ぶ難民は多数いるのだそうです。

ピュトールさんの様に工務店を営む経営者達にとっては、違法ではあるものの、低賃金で税金も納める必要のない不法就労者は、とても都合の良い人材です。

しかし高福祉国家を掲げるスウェーデンにとっては、非常に深刻な問題です。税収入が落ち込む事で、福祉国家としての地位の崩壊を招く可能性があるからです。

スウェーデン税務当局によると、2015年だけでも不法労働者による税収減は、実に660億クローナ（約8485億円）。既に何らかの対策が必要な問題にまで陥っています。

外国人労働者は良薬ではなく劇薬？

スウェーデン移民庁の推定では、難民認定を拒否された移民の内、毎年1万人が国外退去処分から逃れる為に、突如と姿をくらませるのだそうです。そして彼らが行きつく闇市場で働く不法就労者は、現在では3万～5万人いると考えられています。

2013年には、首都ストックホルム郊外のヒュースビー地区で、若者達による暴動が起きています。この地区の住民の80％は、中東やアフリカなどの海外出身者。そして若年層の20％は、学校に行くことも、職に就くことも出来てないのだそうです。

税金を納めない不法就労者がこの先も増え続けるのであれば、福祉国家としての存続が危ぶまれると同時に、新たに移住した移民への手厚い福祉は減ることでしょう。

また移住国に馴染めない親から育てられた2世代・3世代へと繋がる移民の子供達は、社会に溶け込む事が出来ず、社会経済的格差が広がり続け、結果この格差が社会を不安定化させる要因になる可能性は十分にあります。

おかれている状況は各国で異なるものの、外国人を受け入れる難しさを感じているのは、どの国も同じ事のようです。

【参考文献】http://www.reuters.com/article/us-europe-migrants-sweden-insight-idUSKCN0ZN0VV
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-22650267

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