ここ数年、非常に注目を集めている産業があります。どの産業だか分かりますか?それは「フードデリバリー業界」。米誌「フォーブス」によると、フードデリバリー業界の規模は年商700億ドル(約7兆8000億円)まで膨れ上がっているようです。
アメリカでは地元の飲食店に特化したフードデリバリーが中心であったものの、今では通信販売大手のアマゾンもフードデリバリー市場に参入しているほど。
そして隣国の韓国では、市場規模はなんと12兆ウォン(約1兆1400億円)まで達しており、一大産業にまで成長しています。
このフードデリバリー産業への熱は一向に冷める傾向はなく、新しく設立された会社、つまり「スタートアップ企業」への投資額は、昨年だけでも7億5000万ドル(約830億円)にも上ると言われています。
フードデリバリーの新星:マンチェリー
そして数多く立ち上げられているフードデリバリー企業の中でも、ここ最近注目を集めているのが「マンチェリー」。
マンチェリーはレストラン経営やレストランとの契約を一切しておらず、全ての注文をマンチェリー所有の施設内で、元有名料理店勤務のシェフが調理をし、販売しています。
実際に注文した料理。ラベルには最も最適な温め方法が記載されています。
メニューは全てアプリからの注文のみ。そして注文後、30分以内に配達するのも売りの1つとなっています。
また、注文料理は基本的に冷めた状態で運ばれてくるため、温める際の細かな注意点を書いたメモまでも入っていて、できる限りレストランで食べる質を保つように工夫がされています。
そして最近では、自宅でもレストラン級の質の高い食事を自分で調理したい客用に、好みのメニューの料理食材全てを、靴が入る箱程の大きさに収めて配達してくれるサービスも開始。
このマンチャリーの前評判は非常によく、2011年に3990万ドル(約44億円)の投資を受け事業を開始。
また、まだ利益は出ていないにもかかわらず、2015年には更に2800万ドル(約31億円)の追加投資を受け、フード業界で最も注目を集めている企業の1つとなっています。
ドン底から大企業経営者へ・・創設者の驚くべき経歴
しかし、マンチェリーの創設者が有名なのにはもう一つ理由があります。実は、この企業を設立及び運営を行っているトリ・トラン氏は、ベトナムから難民としてボートで海を渡った元難民なのです。
彼が生まれたのは1975年。ベトナム戦争が終わる数か月前の事。終戦後に彼の両親と兄は幾度かベトナムからの脱出を試みますが、成功する事はなく、一時は刑務所に収監された事もあったのだとか。
そんな彼らに不思議なチャンスが訪れたのは、難民斡旋業者から、(彼の)両親と兄を含めた4人での旅は不運を導くサインが出ており、4人での逃亡を諦めるよう言われた事。
最終的にこの予言を受け入れ、トラン氏と彼の兄そして彼らの祖母だけが定員40人のボートに乗り込み、他の難民130人と共に6日かけてインドネシアに渡ります。
インドネシアに到着後は、
- 一緒に海を渡った祖母の息子が既に渡米していた
- 祖母が64歳という高齢であった
- トリ氏と彼の兄が18歳以下であった
といった様々な事が幸いし、6カ月ほど難民キャンプで過ごした後、すぐにアメリカへ難民として移住する事が出来たのです。
ちなみに、ベトナムに残った両親に再会できたのは、彼らが大学を卒業した後。なんと11年もの歳月が過ぎていたのです。
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マンチェリーはtwitterなどを上手く利用して、客にうまくアピールしているよね。
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変なレストランで食事をするより、マンチェリーの食事の方がよっぽどまし。
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シェフ、写真、ウェブデザインなど、その分野でのプロを雇っているから総合的にうまく機能した企業になっているよね。
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全てがアプリからのオーダーか・・・。最近の技術に追いつけない者には全く分からない世界だよ。
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↑本当に。電話注文も受け付けて欲しいよね。
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配達員までオーダーした食事の細かな情報を知っていて驚いたよ。
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職人達のプライドを感じる企業だよね。
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仕事で嫌な事があってマンチェリーで初めて注文したんだけど、予想以上の味で驚いたよ。
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質の良い食事なのに、どのメニューも10ドル以下と言うのがいいよね。
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おまけに子供メニューまであるから、本当に良心的。
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ベジタリアンのメニューがないのは残念。
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創業者が元難民?アメリカでは当たり前の話でしょうに。
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苦労話をしてまで資金集めをしたいの?
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3人で難民ボートに乗ったのは賢かったね。
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やっぱり子供のころから計算高い人間だったんだよ。
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難民が社会に貢献している姿を見ると、誇らしげに思うよ。
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多くの難民がいつかは社会に貢献する国民になってくれると良いんだけど。
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犯罪者になるか、成功者になるか、どうしてここまで極端に道が分かれるんだろう。
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難民を敵とみなす一部の政治家達が、彼から学ぶ事があるのでは?
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難民達による犯罪ではなく、もっと難民達の成功例をメディアは取り上げるべきだよね。
彼のサクセスストーリーが難民たちの光となるか
マンチェリーは2010年に創業して以来、既に300万以上の注文を配達し、数年の内には10都市以上での事業展開を目指しているのだそうです。
また、オンデマンドで事業を行っている企業の雇用形態は「自営業者」と「一般会社員」の2つの性質を兼ねており、雇用形態が非常に曖昧であると言われています。
そこでマンチェリーは2年ほど前からは配達員を「独立契約者」としてではなく、社員として雇用を始めています。
写真雇用となると最低賃金や時間外労働などに対する法的な保護、失業保険や労災補償、そして医療給付などの初期費用が必要となります。
しかし悪天候や注文が殺到する日、例えばスポーツイベント(スーパーボウルなど)などに、確実に信頼性、そして知識のある労働力を確保する事ができる為、逆に20~30%のコスト以上の利益が得られるのだそうです。
IT企業の新たな雇用形態も作り出している彼らの元には、昨年8月に次期大統領候補のヒラリー氏もマンチェリーの事務所を訪問しています。
大統領選挙で移民問題が大々的に取り上げられている米国。テロ行為などを行う移民がいる反面、社会に貢献する数多くの移民がいる事を改めて見直す機会となってほしいものです。
【参考URL】http://www.bloomberg.com/news/features/2016-01-05/how-a-vietnamese-refugee-is-rethinking-food-delivery-in-america
漠然とお金持ちの国に渡って、養ってもらえる事ばかり考えてちゃだめってことさ。果たして膨大な難民の内、何人が成功者として抜け出せるんだろうね。