日本ではなぜか大々的に報じられていませんが、世界で大騒ぎになっている大スキャンダルがあります。それは「パナマ文章」です。

このパナマ文章が流出した後、各国の政府や一流企業、そして超有名俳優やスポーツ選手までもが矢面に立たされています。これ、何の事だか分かりますか？

パナマ文章とは、パナマにある法律事務所から漏れた機密文章の事で、この膨大な書類の中には40年分の「タックス・ヘイブン」に関する大量のデータと顧客リストがびっしりと詰まっていたのです。

タックス・ヘイブンとは「租税回避地」という意味。タックス（税金）が発生しない、或いは非常に税率の低いパナマなどの国を指します。

このタックス・ヘイブン（避難所）で経済活動をしないペーパーカンパニーを設立し、税金対象となる資金を送金する事によって税金逃れをする事なのです。

例えば、日本で儲けた1000万円の半分を租税回避地の幽霊会社へ資金と見せかけて送金してしまえば、税金を払わずに済むという、実質上「脱税」行為が簡単に出来てしまうのです。

有名セレブがずらり。豪華な顧客リスト

このパナマ文章を保管していた法律事務所は、スーパーリッチ達の幽霊会社設立、及び脱税の手助けしていたのですが、パナマ文章で発覚した顧客リストは驚愕のラインナップ。

世界各国の大物政治家、芸能人、スポーツ選手、そして一流企業と、ありとあらゆるお金持ちが名を連ねていたのでした。

税金逃れのためなら国籍すら捨てる！？

ここでちょっと話がずれてしまいますが、高い所得税から逃れるためにアメリカ国籍を放棄する富裕層が増加しているという話を聞いたことがありますか？

2016年1～3月の間だけでも、アメリカ市民権を放棄した人はここ最多の1158人。昨年全体の約4300人を、今年は更に上回りそうな勢いなのだとか。

また補足となりますが、アメリカ国籍を放棄する、つまりパスポート返納の際には2350ドル（約23万9000円）が科せられます。

国籍放棄者が増加傾向にあるからか、2014年の秋には国籍放棄の際にかかる費用を442％引き揚げたアメリカ政府は、既に1260億ドル（約12兆8000億円）徴収しているという話です。

手段はどうであれ、「稼いだお金を出来る限り払いたくない」というスーパーリッチ達の心理状態が伺えます。

より資産を守れる国を求めて・・・拡大し続けるパスポート市場

国籍放棄にお金を支払ってでも資産を守ろうとする富裕層達。一般庶民には非常に分かりずらい世界ですが、資産を守る事が出来るのならば、大金を支払って他国の市民権を手に入れた方がまし、というのが彼らの考え方なのです。

2014年に新たにパスポートを購入するために超富裕層達が投資した額は、なんと20億ドル（約2036億円）。

現在彼らが市民権所得プログラム（CIP）で、熱い視線を送っている国はカリブ海に浮かぶ小さな国々です。ここで投資家たちに最も人気の高い国をいくつか紹介しましょう。

ドミニカ国

最も安くパスポートが手に入る事で有名な国。なんと10万ドル（約1000万円）の投資で市民権獲得可能です。

セントクリストファー・ネイビス連邦

アメリカ大陸では最も小さな国ですが、個人所得税ゼロ、ビザなしでの訪問可能国は130か国以上という特典があり、投資家たちには非常に人気の高い国です。

市民権購入条件は、40万ドル（約4000万円）の不動産投資か、25万ドル（約2500万円）の砂糖産業多様化財団への寄付のどちらかとなっています。

アンチグア・バーブーダ―

セントクリストファー・ネイビスと同様に、25万ドル（約2500万円）の寄付か、40万ドル（約4000万円）の不動産投資のほか、政府認可の事業に150万ドル（約1億5000万円）を投資する「ビジネス投資」もあります。

市民権所得後は約120か国へビザなしで渡航が可能となり、中国・ロシア・中東諸国の投資家たちには非常に魅力的なようです。

メリットだらけ？2重国籍になる理由とは

国際通貨基金によると、CIP制度を最も利用している国籍は中国人とロシア人。例えば、アメリカのCIPプログラムに参加した投資家の80％は中国人。そして、セントクリストファー・ネイビスで市民権を買った人の50％が中国人とロシア人なのだそうです。

しかしアラブの春が勃発した後は、中東諸国の投資家たちも加わり益々パスポート市場が拡大しています。

勿論、政情の不安定な国から逃れるために市民権を購入している方もいますが、一番は“移動の自由”が何よりも彼らには魅力的なようです。

特に9.11のテロ事件後は、イラン・イラク・パキスタンの国籍所持者がビザなしで渡航できる国はたったの40か国。しかし、カリブ諸国の国籍を手に入れる事で130以上の国々へ自由に移動が出来るようになります。

しかし、他国籍を所得する為に躍起になっているのは、移動の自由が規制されている国の出身者だけではありません。今では、アメリカ国籍者をはじめとした欧米諸国の富裕層も税金対策として第2の市民権を購入する時代です。

フェイスブックの創立者の1人でもあるエドワルド・サヴァリン氏や、大物歌手ティナ・ターナーもアメリカ国籍を放棄し、他国の市民になった代表的な例でしょう。

このパスポート市場が拡大したために、今ではセントクリストファー・ネイビス連邦の国民総生産（GDP）の25％は市民権販売関連利益となっており、同国最大の輸出製品とまでなっています。

もし桁外れのお金が手に入ったら、あなたも市民権購入を検討しますか？

【参考URL】http://fortune.com/2016/04/02/passports-citizenship-investment/
http://www.bbc.co.uk/news/business-27674135

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