パル・アルト市、サン・ノゼ市と聞いて、何か具体的なイメージが湧く人は少ないかと思います。しかしシリコンバレーと聞けば、例え渡米経験がない人でも思わず「おお!」と思ってしまいませんか。
もしあなたの友達が「サン・ノゼで就職が決まった」と言ってきても、特に何も感想が出てこないのではないでしょうか。アメリカについて疎い場合はなおさらコメントに困ることでしょう。
しかし「シリコンバレーで働くことになった」と言われると、「ええ!?凄い!かっこいい!羨ましいな、やったね!」と思わず拍手をしてしまうのでは?
シリコンバレーは言わずとしれたハイテクブームのメッカであり、多くの頭脳明晰エンジニア集団と名の知れたIT企業が集う地域です。
この地域でエンジニアとして働いている、と聞くだけで思わず口笛を吹いてしまいそうになる人もいると思います。
ただの砂漠地帯だったドバイが未来都市に変貌を遂げたように、シリコンバレーもかつては単なる農業地だったのがテクノロジーの先端を駆け抜ける地域になりました。
シリコンバレーが不動の地位を築き上げた今、当然ながら世の中は「次のシリコンバレーはどこ?」という関心を抱きます。
シカゴかシアトルか…10年以上にも渡って様々な予想が飛び交っているものの、なかなかまだ決定的な第二のシリコンバレーは誕生していません。
そこでアメリカのウェブサイト「TheRichest」は独自の視点と分析で「第二のシリコンバレー候補地ベスト10」の記事を発表しました。(2015年4月16日付)
その上位、5位から1位までをご紹介してみたいと思います。果たしてあなたの予想地はランクインしているでしょうか!?
5位:スタートアップが集結!LAのウエストサイド(カルフォルニア)
ロサンゼルスといえばドラマ「THE OC」に「ビバリーヒルズ高校白書」…というのはもはや時代遅れです。
今やロスといえばロングビーチではなく、シリコンビーチ。ロサンゼルス郡には88もの市がありますが、ウエストサイドのエリア(サンタモニカ、ヴェネツィア、および周囲の地域)にはここ最近、充実したハイテクブームが広がっています。
前述したドラマの影響もあり、この地帯といえば世界中の若者たちにとってサーファーやショッピングにクラブ、ホットドッグ、ビールそしてボヘミアン的自由奔放のライフスタイル文化のイメージが定着しています。
しかしテクノロジーが盛んになってくるに従い、ロスアンゼルスのウエストサイド辺りはシリコンビーチとも呼ばれるようになってきています。
2013年にはLA投資に約11億ドルもの資金調達があり、本社がウエストサイドの郵便番号を持つ会社は、そのうちの7.41億ドル受け取りました。同年、TrueCar, The Honest Company, そしてDogVacayは1500万ドル以上の利益を上げました。
そしてローカルのスタートアップ会社、SnapChatは事業化のための投資と事業拡大のために110百万ドルもの資金を調達しました。(※多少ニュアンスが異なるかもしれませんが、スタートアップとは短期間に急成長を遂げたベンチャー企業のようなものです。)
ウエストサイドに多くの企業が集まったことは、互いのビジネスパートナーの関係を生み出し、ネットワークシステムを向上させ、地元の会社のイベントや他企業同士の共有ワークスペースを生み出すことになりました。
結果こういったことは共同技術アップのアイディアへと繋がっていきました。誰もが知っているGoogleとYahoo!はロサンゼルス群のウエストサイドのサンタモニカにオフィスを構えています。ほかにも、
- OculusのCEO、ブレンダン・イリブが20億ドルでFACEBOOKに自分の会社を売却
- ディズニーは500万ドルでLAにあるメーカースタジオを購入
- AppleがBeatsを32億ドルで買収
- Whisper, TinderやSnapChatのようなモバイルアプリが大繁盛
LAのテク起業家たちが間違いなく成功を収めているということを、この地域にある889ものスタートアップがまさに証明しており、老舗の大企業にはないパワーとエネルギッシュさがみなぎった会社と人材が集まっているのです。
LAのウエストサイド(シリコンビーチ)は第二のシリコンバレーになる可能性を大きく秘めていると言えるでしょう。
4位:アメリカとヨーロッパの架け橋 ロンドン(イギリス)
2014年、ロンドンの企業2社が10億ポンドで売却されました。Googleは人工知能(AI)のスタートアップ、DeepMind社を、そしてZyngaゲーム会社のNatural Motionを手に入れました。
2013年にはロンドン証券取引所のメインマーケットにおいて、22ものテクノロジー企業が株式資金7.95億ドルを調達しました。
JUST EATは取引初日に15億ポンドの評価額になり、2014年Q2にはヨーロッパでのテク業界最大新規株式公開としてZooplaとMarkitに肩を並べました。
ハイテクブームの中で最も高評価を得ているイギリスの会社は、世界中でファンの多い「キャンディークラッシュ」を手がけるKing Digital Entertainmentです。
Bloombergは、イギリス南東部で744,000人もの技術者がいることを報告しました。これはカルフォルニアの技術者人数(692,000人)より上回っています。
TechCrunchというアメリカのブログサイト(ニュースサイト)によるとシリコンバレーの波をロンドンにもたらした2014年に、ロンドン・テクノロジー・ウィークが開催されました。
これは何かというと、ロンドン市長の支援の下、グローバルなテクノロジー起業家やそのリーダーたちが集結し、起業家精神と創造的才能が集う本拠地としてのロンドンの世界的地位を褒め称え、技術革新とビジネスの成功を一週間を通し祝おうじゃないか、というもの。
40か国以上から4万人以上もの人々が参加し、様々な斬新なワークショップや投資家同士のミーティングを含んだ203ものイベントが行われました。
今後毎年開催される予定で、ロンドン・ファッション・ウィークに匹敵する、もしくはそれ以上の話題と影響力を持ち、途方もない経済効果をもたらす、より大きなものになっていくであろうと予想されています。
こういったロンドン・テクノロジー・ウィークのような大々的なイベントは、イギリスの首都ロンドンにそれまでなかったテクノロジーブームを巻き起こす最大のチャンスともなっています。
ロンドンの街はアメリカのテクノロジー企業が次々とヨーロッパに進出するための架け橋となり、一方でヨーロッパとアジアの企業がアメリカにおいても事業拡大するための受け皿の役割を担い、こういった分野でこの街は新芽を出し始めているのです。
よって多くのアメリカの投資家たちはイギリスの事業に投資を望んでいます。
ロンドンでのテク関係の求人募集は11%増え、カルフォルニアとニューヨークよりも多くのテク人材の需要があることを示しました。
ロンドンにおけるハイテクブームの波はまだまだ静まりそうもなく、むしろますます雄大な波に変貌を遂げていっているといっても間違いありません。
ロンドンといえばパブと宮殿とシャーロック・ホームズのイメージが定番でしたが、それはもはや一昔前のこととなっているのです。
3位:租税優遇措置により有利に ニューヨーク
WeWorkは2014年の終わりに3.55億ドルという巨額な資金調達に成功し、企業価値を50億ドル越えのものにしてみせました。
このニュースは、「ニューヨークが急成長テク業界で強者企業を送り出せる街なのだ」という印象を世に与えました。
起業家向けのシェアオフィススペースのプロバイダであるこのWeWorkは、AirbnbとUber Technologiesといった新興会社のように業界に影響力のある変革をもたらすであろうと期待されています。
ニューヨーク市は減税やインセンティブを謳い文句にし、テク企業誘致に対して積極的な姿勢を示しています。ビル・ブラシオ市長がDigital.NYC(ニューヨークのデジタル化)に取り組み出したニュースは日本でも話題になりました。
ニューヨークで誕生したBuzzfeedは本部の約18023平方メートルの敷地拡大のために400万ドルの税額控除を与えられました。ブルックリンに約18580平方メートルもの広さを持つEtsy本社は500万ドルもの租税優遇措置を受けました。
実際にシリコン・アレー(ハイテク集積エリア)として知られるニューヨークのテク地域は、2008年より雇用の40%が伸びており、これはシリコン・バレーよりもっと急速な上昇率です。
2014年Q3には、ベンチャーキャピタルとしてニューヨークの都市圏において17億ドルという投資額に達しました。
テクノロジープレーヤーや投資家たちはニューヨークならではの大きな発信力に魅力を感じています。
経済、ファッション、メディア、マーケット、商業…。テク企業も多くのジャンルで巨大な力を持つニューヨークに本拠地を置くことにより、より巨万の富と名声を手に入れることができるのではないか、という期待感を持たれているのです。
デジタルメディアの成長、税制優遇、ベンチャーキャピタルの資金調達アップといった要素に成功の確信を持った様々な組織や人々の思惑が動く中、ニューヨークは確実に米国内において次の巨大なハイテクブームの街に変貌を遂げています。
2位:高い民度と文化に恵まれて オースティン(テキサス)
オースティンは最も魅力的なハイテクハブのひとつです。なぜなら、ここには高学歴の若い人たちやベンチャー資本主義者たちが大勢おり、また世界的に有名な音楽やレストランの文化が根付いているからです。
実際にオースティンはとても充実した娯楽の街としても知られており、これはこの土地に若くて優秀なテク人材を惹きつける大きなきっかけの一つのはず。
またフォーブス誌は「将来的に仕事が増える街ランキング」の第2位としてオースティンを紹介しています。実際に2017年までに9000もの新しいテク関連の求人募集が出るであろうと言われています。
オースティンには最も期待されている有望格の新興会社Phunwareを含む5000ものスタートアップ、そしてDELLにNational Instruments、Flextronicsといった17もの上強豪企業の本社があります。
当然ながらオースティンの不動産業も非常に景気が良く、中央値の不動産購入価格は216000ドルとなっています。
1位:クラウド・コンピューティングの街 シアトル(ワシントン)
アマゾンやマイクロソフト社で知られるシアトルは2014年のJLLのトップ10ハイテクシティの第2位にランクインされています。
シアトルはハイテクブームの駆け出しではなく真っただ中にいる街であり、アメリカの大手ハイテクハブとしての役割を担っています。
シアトルのIT企業への投資額は2013年度から2014年度にかけ、約2倍にも上りました。そしてそれは約8億ドルにもなります。
シアトルは世界のクラウド・コンピューティング(ネットを通してのコンピューター資源の利用形態)の首都といえます。この街にある多くのスタートアップ社はクラウドソリューションのビジネスを専門としています。
クラウド・コンピューティングは、プラットフォームの上にアプリやサービスを構築するためにコンピューターがどのように進化していくか、ということの次のキーワードです。
クラウド・コンピューター市場での進撃が、将来のインターネット技術の進撃に繋がっていくのです。
よってこのクラウド・コンピューティング企業が集中したシアトルは、間違いなく次のシリコンバレー候補と言えるのではないでしょうか。
次のシリコンバレーはやはりアメリカ国内?
以上、5位から1位をご紹介しましたが、10位から6位には以下の都市がランキングされています。
- 10位 マイアミ(フロリダ)
- 9位 デトロイト(マイアミ)
- 8位 ダラス(テキサス)
- 7位 ポートランド(オーランド)
- 6位 シカゴ(イリノイ)
このように、ロンドン以外は全てアメリカの都市が第二のシリコンバレーの候補地になっています。
ネット上に出ている一般のアメリカ人たちのコメントを読んでも、大半が「アメリカ国内の地域のどこか」というのが前提となっています。
もっともこの話題は何年も前から引っ張ってきているものなので、夢があるというものの多くのアメリカの一般人たちは比較的冷めた見方をしています。そのうちのいくつかのコメントをご紹介したいと思います。
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エンジニアたちのストレスを発散できる環境が重要だから、天気がよく、太陽と海とビーチがあってサーフィンやボートを楽しめる地域が第二のシリコンバレーになるんじゃないか。
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フロリダは無理だろうな。だってさ、教育システムが最悪なんだぜ。公立はどこもサイテーだし、フロリダに根付いたカルチャーもいかれたものばかりだ。
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スタートアップに向いている街はサンフランシスコ>シリコンバレー>デンバー>オースティンの順だろうな。
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ディズニーはオーランドを次のテクノロジーハブの拠点にしようとしているらしい。ネズミのミッキーが配線をかじりまくるだろうさ。
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オーランドはやかましくてだめだろう。かといってユタみたいな田舎もだめだと思う。意外と軽薄な白人ヒッピーが多くて、落ち着いたビジネスの環境じゃないんだ。
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シリコンバレーは80年代の「頭脳流出」の恩恵により、誕生したエリアなんだ。
当時のスタンフォードとバークリーは世界中から優秀な留学生を大量に受け入れ、そのうちの大半は卒業後もアメリカにとどまることを望んだ。
そのためにはグリーンカードが必要で、シリコンバレーで職につくことが、カードをゲットするのに非常に手っ取り早かった。
その結果、優秀な外国人たちが集まったシリコンバレーはアメリカで一番といっていい多様文化の地域になったんだ。よその伝統や信仰を尊重しながらも、互いの文化を融合させていった。
人口の多くがエンジニアであるというのは、何か問題に面しても実用的に対応し冷静に分析をこなすことができるため、とても整然としつつもユニークな街となる。
政治的妥協をサポートし、多文化性を受け入れられる顔ぶれを持つ土地が間違いなく第二のシリコンバレーになるであろう。
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第二のシリコンバレーはコンピューターだけではなく、何か新しい産業も持っていないと成功しないだろう・・・。
コンピューターだけしか強みがなければ、そこは単なるシリコンバレーのコピーにすぎないセカンドクラスの街になってしまうだろう。
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オースティンは第二のシリコンバレーになりうる可能性がある街だと思うわ。だけどちょっと小さすぎないかしら。
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シリコンバレーは結果的にたまたま大成功をおさめただけであり、決して計画され予想されていたものではない。最初から狙っていたらうまくいかなかったと思う。
だから第二のシリコンバレーを目指そう、とあれこれ画作してもだめなんじゃないか。
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シリコンバレーに住んでいたことがあるよ。気持ち良い気候と頭のいい人種のコンビネーションが見事な所だった。
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僕もシリコンバレー界隈に住んでいたけど、たいしていい所じゃなかったぜ。日曜なんてダウンタウンはまるで死んでいて活気がなかった。
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・全国的に名の知れた研究機関(大学)が二つはあること
・高度なテクノロジー産業に強いバックグランドを持っていること
・快適な気候
・リベラルな政治
・グローバルな多国籍料理屋が充実していることこれらを兼ね備えている土地であれば、第二のシリコンバレーになれると思う。
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多くの人が「気候が大事」といって海岸エリアを考えているようだけど、文化や教養の高さも大事なはず。だからボストンが第二のシリコンバレー候補でもいいと思うわ。
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今から40年前にワシントンDCからフロリダに引っ越してきたんだけど、常に何か新しいものが生まれる風潮が最高だと思ったわ。
一生フロリダを離れる気はないし、新しいテクノロジーの誕生と発展の本拠地には最適の場所だと思うわ。
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シアトルはサン・ノゼやシリコンバレーよりもっと多様性に満ちた街。だからシアトルが新しい改革の街にふさわしいと思う。
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第二のシリコンバレーが国内のどこかだ、と決めつけているアメリカ人たちはまぬけだと思うね。
常識で考えて、ムンバイや東京、ソウル、上海に決まっているだろ。いいかい、アジアはテク分野でも頭角を現しているんだぞ。
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↑ いや、ニューヨークシティが第二のシリコンバレーに決まっている。こんなにエキサイティングで常に進化をしている大都市は世界中探してもどこにもないよ。
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テク技術者たちに街を乗っ取られる危険性も予想しておいたほうがいい。やみくもに自分の街が第二のシリコンバレーになればいい、と喜んでいるのはどうかと思う。
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オーランドは湿気が多いからテクノロジー企業誘致は難しいんじゃないかしら。
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そんなにもテクノロジーエリート集団たちに支配されたいと願う人々が多いことに驚き呆れたね。
【参考URL】http://www.therichest.com/rich-list/rich-countries/10-cities-that-could-be-the-next-silicon-valley/?view=all
http://www.nytimes.com/2015/03/05/upshot/what-is-the-next-next-silicon-valley.html?_r=0&abt=0002&abg=0
文化も教養もない地域は最低だからな~。気候が大事なのはめっちゃわかるわ…あと料理がおいしいっていうのもね。ジョニーはシアトル推しとくわ。みんなのコメントの中に東京があがってたのがなんかうれしいな。
東京もある意味シリコンバレー的なんだよなぁw政治に近い東京に本社集まったしw
この中でいうならカリフォルニアかな。でもシリコンバレーってMSとintelの存在が大きいわけでそれに匹敵する産業革命が起きる可能性をまず考えないと第二を名乗ることは不可能じゃないかな。アジアの時代という※に一言いうなら産業にとって重要なのはまず政治の安定性と規制なんだよね。それを考慮すると東京以外あり得ない。
日本のITベンチャーはただの土方+体育会営業