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サウスウエスト航空設立、常識破りの名経営者 ハーブ・ケレハー

2014/08/19
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エルビス・プレスリーの服装をして社員募集広告に登場し、「エルビスを目撃できる職場。履歴書はエルビス宛に」と書く。広告には社のマークのタトゥーシールをして登場。

社員パーティーには出張をキャンセルしてまで参加し、時には女装で登場。他に話題になった仮装が映画『マッシュ』のクリンガ-、アル・カポネ、レット・バトラー。

「自分の最大の功績の一つがゲロをまき散らす才能」と発言したかと思うと、オートバイのハーレーデイビッドソンが大好きで乗り回し、60歳を超えた時に社員から、その改造版の贈呈を受ける。

広告の宣伝文句で苦情をあげたライバル企業に対して、使用の停止も法廷での争いもなく、相手企業のトップと腕相撲で決着をつける(「ダラスの対決」とマスコミがもてはやしたエピソード)

…こんな経営者を想像できるでしょうか。すべて、アメリカきっての名経営者の一人と呼ばれるハーブ・ケレハーのエピソードです。まったく畑違いの航空業界に飛び込み、設立したサウスウエスト航空を世界有数の航空会社に育てあげました。

サウスウエスト航空設立

1932年生まれのケレハーが最初に選んだ職業は、法律でした。ニューヨーク大学で学んだ後、ニュージャージー州最高裁判所で事務官として働き、1960年にテキサス州サンアントニオで法律事務所を開きました。

弁護士として経験を積んでいたケレハーが、まったく畑違いの航空業界に足を踏み入れることになったのは、1966年でした。

ダラス、ヒューストン、サンアントニオ間の移動が不便だと感じていたテキサス州の銀行家が、サンアントニオで小さな航空会社を経営していたロリン・キングにテキサス州内で運航する航空会社の設立を持ちかけました。

この話にのったキングは、自分の会社の法律顧問を務めていたケレハーに参加を呼びかけます。

ケレハーとキングはさっそく、過剰サービスをそぎ落とした低料金の航空会社、というビジネスプランを紙ナプキンの裏に書き殴ります。

サウスウエスト航空の理念の誕生です。この紙ナプキンは、額に入れられ、ダラスにあるサウスウエスト航空本社の壁に飾られています。

とはいえ、創業はスムーズにはいきませんでした。

1968年にダラス、ヒューストン、サンアントニオの3都市を結ぶ航空会社として認可を受けたものの、市場がすでに飽和状態で、新たな航空会社が参入するのは不可能と主張するライバル航空会社3社から差し止め命令を受けてしまいます。

勝訴はしたものの、訴訟のおかげで開業に必要な費用がなくなってしまい、運航に必要な人員もたりませんでした。

やっとのことで創業にこぎつけたのは1971年6月18日のことです。

売れ残ったボーイング737型機3台を使った3都市を1日18往復する航空会社でした。ケレハーにとっても非常にうれしい瞬間だったようです。後に、

「仕事で最高の瞬間は、4年も待たされた後、やっとサウスウエスト航空初の便が到着した時でした。飛行機に歩み寄り泣きました」

と語っています。しかし、当社の利用者数は伸びず、資金難に苦しむことになります。

サウスウエスト航空の成功

都市部に近い第二空港を発着地点に選び、経費削減に成功したサウスウエスト航空は、格安サービスの提供に力を注ぎ始めした。

ヒューストンからダラスまで片道20ドルという常識を破る片道10ドル、平日朝と昼のピーク時には運賃を26ドルとしながら平日夜と週末、休日のオフピーク時には13ドルに引き下げるサービスは特に宣伝をしなかったにもかかわらず、大きな評判を産みました。

また時刻通りに運航し、便数が多く乗客は待たされることがないという利点もありました。

こういった努力が実を結び、1973年に黒字化に成功し、テキサス州リオグランデバレーに新路線を開発することになります。低運賃で便数を多くするというサウスウエスト空港の基本戦略はリオグランデバレーでも成功しました。

1978年、カーター政権が航空自由化政策をとったため、それまでテキサス州内でしか運航できなかったサウスウエスト航空はテキサス州を飛び出すことができるようになりました。

ある程度集客が見込める短距離、中距離の路線を開設してそれをつないでいくことでネットワークを拡大するという従来と異なる方式を採用したサウスウエスト航空は、従来型サービスに不満を抱いていた利用者層からの支持を得ます。

ケレハーの二大目標

1978年、初代代表取締役社長の辞任に伴い、ケレハーは会長に就任します。

1981年には二代目代表取締役社長が辞任したため、代表取締役社長兼会長となりました。ケレハーが全権を握ったことが、サウスウエスト航空の大きく業績をのばしていくきっかけになります。

ケレハーの二大目標は、費用を削減して安く良質のサービスを提供すること、そして従業員と顧客を楽しませることでした。

低価格のサービス提供こそ、サウスウエスト航空の創業理念でした。この理念を実現するには、徹底して無駄を削減する必要がありました。

サウスウエスト航空で提供されるのはピーナツ(後にスナック類が加わります)とソフトドリンクだけでした。社員が機内食を提案すると、「そんなことをしたら費用を削減してお客が期待する格安運賃を提供できなくなる」と却下しています。

顧客が求めるのは低運賃、だからこそ一見お客を喜ばせそうな機内食でも不要経費として削減し、期待にこたえようとしたのです。

その一方、ドリンクをサービスする時は、個別に注文をうけてから準備し、トレイで客席にもってきます。わずか30分の飛行時間でも、必ずお代わりが必要か確認するという、驚くべきサービスの良さを誇っています。

また、格安航空会社であるにもかかわらず、座席の大きさは標準的なもので、幅を狭くして定員を増加させることはしていません。収益ではなく、顧客満足度を優先させました。

従業員第一主義

顧客を大事にするという姿勢は打ち出しながらも、ケレハーにとって何より大切なのは従業員でした。

仕事を始めた頃にビジネススクールの教授に、従業員と顧客と株主のどれが一番大切だと聞かれたものです。

まるで答えられない質問だろうと言わんばかりでした。でも、私にとってはとても簡単な質問でした。

一番大事なのは従業員です。従業員を大切にするとどうなるかわかりますか?従業員はお客を大切にしますから、お客が戻ってくるのです。そうすれば株主も喜ぶことになります。

だからどれかを選ぶと他のどれかが犠牲になるということなどないのです。最終的には株主にとっての価値を生み出すことになるのですから

ケレハーは、リーダーはメンバーのために存在し、尽くすと考えるタイプでした。ケレハーほど働く者はいないというのが社内の評判でした。

朝7時に出社して、ヒマを見つけては現場を回って社員に語りかけ、飛行機の操縦以外は何でも手伝いました。22,000人の社員のうち、17,000人の顔と名前を覚えていたといいます。

また、社員との約束を破ることもありませんでした。

社員向けメッセージには、「従業員に安定した作業環境と学習と人間としての成長を遂げる機会を平等に提供することを約束します」と書き記しました。

実際、サウスウエストで解雇された従業員は、資金難にあえいでいた初期の数名をのぞいて、存在しません。人件費もコストの削減対象にはならず、給与水準は大手航空会社と比較して遜色はありません。

また、航空業界ではじめて自社株購入権(ストックオプション)を従業員に提供しています。

当然、社員の満足度は高まります。離職率はわずか7%と業界最低水準です。

従業員用施設には従業員のパーティーや何かの祝い事でとった写真が壁中を飾られるようになります。ケレハーはこうした催しへの飛び入り参加を好みました。社員がカジュアルな服装で職場に来ることも歓迎しました。

従業員の楽しい気分はカジュアルでフレンドリーなサービスを産み出し、評判を呼ぶことになりました。

たとえば、飛行機の出発が遅れたある日、ゲートにならぶ乗客に従業員がゲームへの参加を呼びかけ、勝者にパイプクリーナーをプレゼントしたことがあります。

飛行機を待っていた他の乗客は全員、ゲームの勝者に拍手を送ったといいます。退屈なはずの待ち時間は楽しい時間に変わっていったのでした。

景気に左右されず、2001年に同時多発テロ事件で航空産業が冷え込んだ時ですら黒字経営を続けたケレハーは2008年に引退し、名誉会長となりました。

サウスウエスト航空が2012年にスイスの格付け機関から世界で最も安全な航空会社10社のうちの1社に選定されたのも、ケレハーが作り出した従業員第一主義のたまものといえるでしょう。

【参考URL】http://books.google.co.jp/books/about/Nuts.html?id=y7vDgA1cueoC
http://bornleader.net/2011/10/30/leadership-upside-down-herb-kelleher-style/
http://catalog.flatworldknowledge.com/bookhub/reader/2199?e=carpenter-ch16_s03
http://en.wikipedia.org/wiki/Herb_Kelleher
http://www.southwest.com/assets/pdfs/travel-extras/inflight_menu.pdf
http://swamedia.com/channels/Officer-Biographies/pages/herb_kelleher
http://www.biography.com/people/herb-kelleher-278970#awesm=~oGndrl1oSn8r9O
http://www.cnbc.com/id/100000142
http://www.freibergs.com/books/nuts-southwest-airlines-crazy-recipe-for-business-and-personal-success/
http://www.leadernetwork.org/herb_kelleher_september_07.htm
http://www.logomaker.com/blog/2012/05/21/9-inspirational-quotes-on-business-by-herb-kelleher/
http://www.nytimes.com/2002/07/07/business/private-sector-southwest-without-the-stunts.html
http://www.peoi.org/Courses/Coursesen/intlbus/contents/frame12c.html
http://www.questia.com/library/journal/1G1-65357277/flying-high-with-herb-kelleher-a-profile-in-charismatic
http://www.referenceforbusiness.com/biography/F-L/Kelleher-Herb-1931.html
http://www.strategy-business.com/article/04212?pg=all
http://xzellent.wordpress.com/2007/05/12/southwest-airlines-success-story/

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この記事に対するコメント
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