以前からアメリカの音楽業界では、一握りのスーパースターが収入を独占していると言われていましたが、コンサルティング会社の調査によるとその格差は想像を超えるものだったようです。
そういえば、日本でよく目にしたり耳に入ってきたりする音楽は、限られているような気がします。
国内外で宣伝費をかけられる一部のトップアーティストだけがどんどん売り上げを伸ばし、大半の無名なアーティストが才能のあるなしに関わらず、発表の機会も与えられないまま表舞台から消えていくのは当然のことでしょう。
音楽業界の事情だけでなく、消費者側の行動も格差に拍車をかけているようです。その実態と理由について紹介します。
1パーセントのトップアーティストが、レコード音楽収入の77パーセントを稼ぐアメリカの音楽業界!
レコード音楽業界全体の収入からアーティストが受け取れる額は、2000年には14パーセントだったのが2013年には17パーセントに伸びています。しかし、全アーティスト収入の77パーセントがトップ1パーセントの音楽作品で占められているのです。
「スーパースターエコノミー」とも呼ばれるこの現象は今に始まったことではありません。経済の仕組みが資本主義である以上、格差は広がっていくばかり。今後も広がっていく可能性大です。
さまざまな音楽の中から自分の好みの楽曲を見つけ出すのは、多くの消費者にとって骨の折れる作業です。特に仕事で忙殺される年代の人たちにとって不可能なことでしょう。
その結果、楽な方向へ流されます。つまり、好きな曲やアーティストを探し出す時間と労力を惜しみ、一般的にメジャーなアーティストを何となく受け入れてしまうようになるのです。
「豊かさは不幸を招く」と言われる典型的な例です。商品が豊富になればなるほど、消費者は選択の悩みが増え、簡単に売れているものを買う傾向があります。売れるものが更に売れるようになるのです。
【参考URL】
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トップ1パーセントのアーティストだけがラジオに出演して、雑誌や新聞の記事を飾り、
iTunesストアや店頭の目だった場所に商品を置いてもらえて、大キャンペーンを繰り広げて、メジャーな音楽番組の賞をもらっている。
日常入ってくる情報は彼らのものばかり。今さら驚くことじゃないよ。
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アメリカ国内の収入格差に比べたら、音楽業界はましだと思う。アメリカのトップ1パーセントが全収入の95パーセントを稼いでいるんだから。でも、自慢するほどのことじゃないけどね。
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もしトップアーティストになれたら、1曲で一生食べていけるよ。知り合いで、80年代から毎年1曲につき30万ドルプラス印税を得ている作詞家がいる。
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ショッキングだ!ニュース速報、最高の予算があって最大の宣伝をしたアーティストがほとんどの金を稼ぎます。
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たくさんの選択肢は、音楽ファンにとって決して悪いことではない。好きな音楽へのアクセスを増やせば増やすほど、より早くアクセスできる。
唯一の欠点は、ピックアップと破棄の作業だけでは音楽への思い入れがないってこと。
バンドの真のファンであるのは珍しい。たぶん付き合いの欠如も関係しているんだと思う。ライブショーは気の合った仲間と出会えるいい場所なんだけどね。
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無名のアーティストたちにとっても、今の状況は良くない。消費者は毎回安心なオンライン試聴を使う。広告はクリックを買う。広告は歌を売る。でも、大物だけが広告料を払える。
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ちょっと昔を振り返ってみよう。40年代から60年代はラジオの影響力が大きかった。
でもダンスホールやソーダショップがあって、新しいバンドや音楽を見つけることができた。地方のDJやダンスホールでは、地元の子供たちが盛り上がるような音楽編集をしていた。
重要なのは地方で発見され、外部に広がっていったということだ。
70年代から90年代はラジオ全盛期で音楽編集も盛んになり、どんどん少人数のグループで管理されるようになった。そしてディスクを売ることが最終目標になった。
21世紀のデジタル時代には、管理された作業工程は機能しなくなった。かといって元に戻るわけではなく、現状を維持する方向で規制がかかるようになった。
聴く人がいなければ編集はできない。現在選択に駆り立てるのはラジオしかない。
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産業はお金で支配されている。今までもずっとそうだった。
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音楽の消費は、今の時点テレビに支配されているんじゃないか?
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ほとんどの音楽消費はアメリカだとYouTubeやPandoraで起きている。
YouTubeには今まで録音された採算の取れる歌曲とラジオ形式のビデオステーションで精選されたプレイリストがあり、iTunes、 Spotify、Beats、Amazonより積極的なユーザーがいる。
PandoraにはYouTubeよりさらに積極的なユーザーがいる。
トップの座に足跡を残し、お金を得ている作詞家やレーベルが、劣悪なオンラインストリームにどれぐらい支払っているかみんな知っている。ほとんどのアーティストは違うけど。
過去も未来もトップアーティストはいて、大金に化けるヒットがあり、イメージ商戦で消費者を誘導する関連ビジネスが存在する。
問題は、今やすべて無料で手に入れられるようになったので、あらゆるビジネスモデルが頭打ちであることだ。味はともあれ、1ペニー以下のキャンディーを売る店の隣りにキャンディー店を開きたいと思う?
悪質なビジネスが横行しているけど、永遠に続くものは何もないよ。
まとめ
音楽業界の収入格差は、「豊かさは不幸を招く」論や無名なアーティストが活躍できる環境
でないなど、さまざまな意見があります。
しかし1番の問題はアメリカ自体が深刻な格差社会である、ということです。
たった1パーセントの富裕層が国内全所得の20パーセントを得ているのですから、音楽業界に限らず、多かれ少なかれあらゆる業界で格差は進んでいると思われます。
ちなみに、上位1パーセントの国民所得が全体の所得の約20パーセントを占めるのは過去最大規模です。
YouTubeなどの動画では、プロの演奏に交じって素人による演奏が多くアップされています。新しい音楽が生まれる可能性を秘めていますが、盗作などされないように守らなければならないなど、解決すべき問題点もあります。
今は、次の音楽文化に移行していく過渡期なのかもしれません。