昨年末に世界を騒がせたニュースといえば、ヨーロッパに流れ込んでくる大量の移民。「21世紀の民族大移動」と呼ばれるほど、大量難民が発生する原因となっているシリア内戦です。

しかしこの大混乱を利用し、経済的に豊かな生活を願う「経済難民」も多く紛れ込んでおり、本当に助けの必要な難民がどれだけいるのかは、非常に分かりづらい状況となっています。

難民の受け入れを一番初めに発表したドイツでは、2015年のピーク時には、1日当たり1万人の難民が押し寄せました。

そして、最終的に100万人以上の難民申請を受け入れる事となったのです。ドイツの人口が約8100万人という事を考えると、急激な社会的変化をもたらす事はドイツ政府にも容易に想像ができたはず。国としては物凄い決断をした事になります。

対策に追われるドイツ政府

ドイツが大量の難民受け入れを決めた昨年の9月には、2016年度の難民対策費用を153億ユーロ（約1兆9200億円）と発表していました。

しかし、ドイツ紙「ディ・ヴェルト」によると、最終的にドイツ政府が組んだ難民対策予算は170億ユーロ（約2兆1300億円）。初期の予想を上回る数の難民が押し寄せ、予算を大幅に増大せざるを得なくなったのでした。

難民問題が解決しない・・・国民のイライラが募る

しかし突然の大量難民流入に一番戸惑っているのは、ドイツ市民。ドイツ国営放送ZDFの調査によると、回答者の51％がドイツ政府は難民問題を上手く処理する事ができると回答している反面、無理だと考えている人は46％でした。

現在は難民を支援するドイツ市民が大半を占めているものの、この難民問題を機に国民の意見が真っ向に分かれ、ドイツ社会が不安定化する要因ともなりえます。

実際に、最近では右翼の過激派集団による難民キャンプへの放火事件など、難民に対する犯罪は増加傾向にあります。

俺たちこそ被害者だ！膨れ上がる難民達の不満

ところで、難民を税金泥棒と批判する人達もいますが、実は、ヨーロッパに渡った多くの難民達が、移住先ですぐに保護を受けているわけではありません。

苦労してたどり着いたのに・・・保護までの道のりは長い

父親と共に数か月かけてドイツに渡ったシリア人のイブラヒム君（16歳）。彼らがドイツに辿り着いたのは保護を受ける4か月前。

多くの難民達と同様に彼らも多額の金を払い、命の危険を冒してヨーロッパに渡った為、移住先では住む場所は勿論の事、生活の為に必要な資金や衣類等は全くないと言っていい状態。

しかし、彼らがドイツに辿り着いてから4か月間、生活保護申請の手続きの為に毎日4時間以上、厳しい寒さの中列に並ぶ生活を強いられています。

また、数か月列に並んだ後にようやく生活保護の申請ができたとしても、実際に様々な保護が受けられるまでには、更に数か月かかるのが現状なのだそうです。

ドイツ政府は、再開発予定であったビルや学校の体育館などを難民の住宅として利用すると同時に、空き地には簡易住宅も建設し、難民への住宅確保への対応に追われる状況で、大量に発生した難民達への十分な支援ができない状況が続いています。

難民の魔の手から逃れるために・・・護身用武器の売上げが増大

支援が十分に受けられない。そんな難民達のストレスが爆発したのか、昨年の大晦日から元旦にかけて、とうとうドイツ市民が恐れていた事件が起きてしまいました。それは、ケルンで発生した大量の難民達による窃盗、痴漢、レイプ事件。

ドイツの大晦日は「シルベスター」と呼び、市民は街に繰り出し、盛大に祝うのが習慣。そのため、毎年何らかのトラブルは発生してたものの、今回の様に676件の刑事告訴（この内の347件は性犯罪）が、短期間に発生したのは初めてでした。

女性だけが狙われた非常に卑怯なこの事件。ドイツ国内では、女性だけでなく、女性達を守る事ができなかった男性、そして市民を守るはずである警察への不満と怒りが爆発したのはいうまでもありません。

そしてこの事件後、警察への不信が広がった事もあり、ペッパースプレーやスタンガンといった、護身用の武器がドイツで異常なほど売れているというのです。

また、ケルンの警察には、ガス銃や模造銃の所持許可の申請が300以上出されている、とまで報道されています。

ちなみに、一般人の銃の所持は勿論の事、実は、ペッパースプレーの人に対する使用はドイツでは禁じられています。もしスプレーを使用したのならば、2000ユーロ（約25万円）の罰金が科せられます。

罰金を払ってでも自分の身は自分で守るしかない、という警察への信用度の低さ、そして一般市民の恐怖感がしみじみと伝わってきます。

悪い事ばかりじゃない？難民流入で大儲けしている産業

難民大量流入のネガティブな話題ばかりが聞かれますが、ドイツのシンクタンクの調査によると、難民に対す費用は高額なものの、後に定住した難民達が消費を始めた場合、大幅な税収入が見込まれるという経済的に明るい調査結果があります。

また、家具屋や、簡易住宅産業、そしてホテル産業も、難民達のおかげで思いもよらずビジネスチャンスを手に入れた様子。大手家具メーカー「IKEA」では、マットレスやベッドなどが大量に売れており、品薄の状態が続いている状態なのだとか。

困っている人を助けてあげるのは、経済的に恵まれている国民の義務かもしれません。ただ、社会構造を急激に変えてしまうほどの難民が押し寄せたならば…。考えると物凄い怖い話ですよね。

【参考URL】http://www.nbcnews.com/storyline/europes-border-crisis/cologne-sex-attack-sprees-sparks-huge-spike-weapons-sales-n497201
http://www.nbcnews.com/storyline/europes-border-crisis/migrant-influx-tests-german-efficiency-boosts-profits-some-n449101

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