ここ最近のヨーロッパ諸国では、中東や北アフリカから大量に押し寄せてくる難民の対応に追われています。

今年に入ってから難民申請数は急激に増加し、ドイツとハンガリー両国合わせた難民申請数だけでも、今年7月の段階で既に43万8000人。現在では、昨年の難民申請数57万1000人を軽く超えていると考えられています。

元々ドイツは難民受け入れに寛容であり、ヨーロッパを目指す難民達の間では人気の国です。そのためドイツでは、今年の7月までに既に18万8000人の難民申請を受けており、昨年1年に提出された数より1万5416件を早くも上回る勢いです。

また、今回の難民問題に応じて更に80万人の受け入れを発表。この決定に際し緊急に組んだ予算はなんと60億ユーロ（約8039億円）にもなるとの事です。

国別難民申請者数　

参照：国連難民高等弁務官事務所

難民と市民の人口比率

しかし、ドイツでは難民受け入れ数がヨーロッパで一番多いからと言って、自国民と難民の比率も必然的に一番高いという訳ではありません。

ヨーロッパの中では広い国土を有するドイツでは、1000人の住民に対して難民数は意外と少なく2.1人。難民の市民人口に対する比率が最も高いのは、実はスウェーデン。住民1000人に対して7.8人という非常に高い割合となっています。

参照：国連難民高等弁務官事務所

本当に難民？受け入れ審査が厳しい理由

EU各国では、ドイツが大量の難民受け入れに応じた事もあり、大掛かりな難民の受け入れをせざる負えない状況に追い込まれています。

しかし、今回のヨーロッパへ移動する難民達の中には、シリアやイラクと言った内戦を逃れて移動する人に紛れて、今回の波を利用した経済的難民や戦争犯罪者、最悪の場合、テロ組織の一員も含まれていると考えられています。

こうした背景があり、各国での難民受け入れ審査は非常に難しいとも言われています。

『私たちは関係ない』難民拒否の湾岸諸国

ところで、ヨーロッパではイスラム教徒の受け入れに否定的な人達が必ず持ち出す論理があります。

それは、ムスリムはヨーロッパ、要するにキリスト教に根差した社会での適応は不可能であり、ヨーロッパ諸国ではなくイスラム諸国が彼らを保護すべきである、という説。

では、ヨーロッパが多大な負担を負っている印象の強い難民問題ですが、イスラム諸国ではどれだけの難民を実際に受け入れているのでしょうか。

国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）から発表された最新のものには、中東諸国でのシリア人難民の受け入れ人数を公表しています。それによると以下の通り。

驚く事に、今なお内戦の続くイラクでさえも多くのシリア人難民を抱えている事が伺えます。

しかし多くのシリア人難民を抱えている上記の国々は、決して財政的に裕福という訳ではありません。急激な難民流入により、学校や病院などの公共サービスがマヒ状態になっているとも伝えられています。

ここで、また新たな疑問が浮上します。中東諸国よりも遥かに財政的に豊かな湾岸協力会議（GCC）加盟国（バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦）での難民受け入れはどうなっているのでしょうか？

実の所、彼らの難民受け入れ数は「ゼロ」。サウジアラビアには50万人のシリア人が在住していると言われていますが、彼らはすべて「難民」ではなく正式に労働ビザを取得した「労働者」です。

サウジアラビアでの生活が永遠に保障されているものではなく、仕事を失えば国外退去を言い渡され、いつ国から追い出されてもおかしくないのが現状です。

イスラム教も保護して！サウジからの驚愕な提案

その為最近ではGCC諸国への非協力的な姿勢に非難の声が聞こえるようになりましたが、GCC諸国の言い分としては、アサド政権に対抗する反体制勢力への武器および資金援助をすると同時に、中東諸国で暮らす難民へ多額の支援金を支払っていると反論しています。

しかし国連の調べでは、最も支援金を支払っているのはアメリカで5億7400万ドル（約706億円）。次いでイギリス。そして3番目がクウェートで1億6570万ドル（約204億円）となっています。

世界中から非難の声が上がる中、やはりムスリムの聖地、メッカを抱えるサウジアラビアにとって都合が悪かったのか、最近ドイツ政府へようやく難民支援を申し出ました。

それによると、住宅や食料支援、あるいは難民引き取りと言う現実的なものではなく、100人の難民につきモスクを1棟ドイツ国内に建設すると言うのです。

ドイツでの今後の難民受け入れ人数を考慮すると、ドイツ国内に200余りのモスクを建設する準備と意欲があるのだそうです。

パンク状態で先行きが不安なヨーロッパ

ヨーロッパ諸国の一般市民は、多くの難民達が助けを必要としているのは十分に理解しているものの、やはり急激な社会的変化に戸惑っていることも確か。

ここ最近頻発するようになった、ムスリム教徒によるテロ行為やムスリム女性が目だけしか出さない服装（二カーブ）に対する不満など、イスラム教徒への不信感をあおる事件や習慣はヨーロッパだけでなく、世界中で起きています。

ドイツに流入する難民、特にシリア人難民は中流階級者や若者が多く、学歴・資産を兼ね備えている為に、比較的早い段階で彼らがドイツ経済にポジティブな影響を与える、と主張する人もいます。

しかし、突然文化も言葉も異なる市民が大量に流れ込んで来たら、あなたならどう対処しますか？来てしまった難民をどう処理するかではなく、難民を生み出す原因を深刻に検討、あるいは除外していく国際社会はいつ実現するのでしょうか。

【参考URL】http://www.independent.co.uk/news/world/europe/saudi-arabia-offers-germany-200-mosques–one-for-every-100-refugees-who-arrived-last-weekend-10495082.html
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-34131911

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