欧米で子育てをしていると、学校から定期的に貰う手紙があります。しかもあまりの頻度の高さ故、すでにフォーマットがあるようで、毎回同じ手紙です。さて何についてのお知らせか分かりますか?
正解は「シラミ発生注意報」。
シラミにはいくつかの種類がありますが、学校で集団発生してしまうのは頭に寄生する「アタマジラミ」。ここまで聞くと、欧米人が非常に不潔な様に感じますが、イギリスの市場調査会社「ユーロモニター」の調べでは意外な結果が。
上の図を見てください。この調査によると、実のところ日本以外の15ヶ国の方が1週間にシャワーを浴びる回数が多くなっています。
しかし、日本人とメキシコ人に限って、シャワーを浴びる度にシャンプーを使用しており、ほぼ毎回髪の毛を洗っている事も分かります。
そこで、やっぱり日本人は清潔でシラミなんて関係ない、と思った読者の方、それは早とちり。国立感染症研究所によると、実は、日本でもアタマジラミの発生件数が1994年より増え続けているのです。
シラミと日本人との歴史
終戦後、ヒトジラミ(「アタマジラミ」と、衣類につく「コロモジラミ」)は、当時の法定伝染病に指定されていた発疹チフスの媒体になるとして、日本時は有機塩素系殺虫剤DDTの真っ白な粉を大量にふきかけられていました。
その甲斐あって、日本からアタマジラミはほとんどいなくなりましたが、DDTの強烈な残留毒素が問題となり、1971年以降にDDTが製造禁止された後、海外交流も盛んになった事も重なって、82年には、アタマジラミの感染者数は約2万4000人と再びピークを迎えます。
その後、80年代後半に新しい薬剤が開発され、感染者数は減少傾向にあったのですが、1992年に約7500人と再び増加し、現在でもシラミ感染は拡大し続けているのだそうです。
ピンチはビジネスチャンス!?
アメリカの疾病対策センターによると、米国内では年間最大で1200万人の子供が、そしてイギリスでは、16歳以下の子供の3分の1に当たる406万人がシラミに感染するのだそうです。
イギリスでは、アタマジラミ感染者の登校を推奨しているものの、現実には年間178万人が270万日学校を欠席しており、それに伴い保護者も278万日の休暇を取る羽目に。
その為、シラミ感染によって引き起こされる生産性の損失は、2億3800万ポンド(約344億円)にも上る、という話もあります。
なんとも悩ましいシラミ。しかし、シラミ感染の経験をもとに、逆にチャンスをつかんだ人達がいます。今回はシラミビジネスで大成功を収めた方を紹介しましょう。
①24時間 シラミ相談
シラミに感染した為に子供が学校に行けず、やっと見つけた仕事も欠勤。精神的・経済的に窮地に立たされている可哀そうな姉を見て、フィールズさんはビジネスを思い立ちます。
それは、時間や場所を選ばず、シラミ除去を行う24時間シラミ除去サービス。防護服にヘッドルーペ(頭につける虫眼鏡)、そしてシラミとシラミの卵を採る為のくし、無農薬・非毒性の特殊スプレーという武器と共に、依頼を受けた家庭を訪問しているのです。
フィールズさん(右)と共同経営者エッケルトさん(左)
一度の訪問で請求する額は、平均300ドル(約3万3000円)。この費用には、シラミの除去だけでなく、家族全員のシラミ検査、そして、次回感染した場合に自らが除去作業を正しく行えるように、シラミとシラミ除去の正確な知識の伝授費用も含まれているのだとか。
フィールズさんが2008年に開業してから、売り上げは着実に伸びており、2012年の収益は約70万ドル(約7750万円)。今では全米に8つのフランチャイズ、そして従業員約50人を持つ企業にまで成長しています。
②シラミ除去マシーン
アメリカでのシラミビジネスブームに感化され、2006年にイギリスでシラミビジネスを始めたのがライトさん。ライトさんのビジネスモデルはハイテク機器を使用してのシラミ除去サービスです。
ライトさんが提案する除去作業は3段階。
- 1.吸引機で生きているシラミを吸い取る
- 2.シラミの卵を熱風で殺処分
- 3.最後にシラミ用くしで髪の毛に残っているシラミとその卵を全て除去
1回90分かかる作業の治療代は100ポンド(約1万4000円)。1週間後のフォローアップ治療には、半額の50ポンド(約7000円)。
合計150ポンド(2万1000約円)と少し高めではあるものの、ロンドンで大成功を収め、今では全英に支店を構え、何千人もの患者が毎週訪ねて来るのだそうです。
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保護者は、シラミに対する正しい知識を持つべきだよね。
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子供の頭に、シラミが大量に発生するのって珍しい話だと思うけど。
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シラミって清潔な頭皮の方を好むんだよね…。
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やっぱりシラミに感染したら学校を休むべきだよ。
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シラミは飛び跳ねたりしないから、学校を休む必要はないよ。
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アタマジラミは頭と頭の接触で感染するから、感染した子供は少なくとも学校に報告すべきだよね。
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髪を短く切るか、長髪の場合はしっかり結んでおくのが一番の解決策だよ。
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学校は感染した子供の家族の支援をすべき。
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高額な治療費を出さなくても、定期的にシラミ用のくしを使えば感染率はかなり減るはず。
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こういう商売には本当に嫌気がさす。
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こういう商売に騙される親もバカ。
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自分の子供の面倒は、ちゃんと親が見ようよ。
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シラミが嫌なら頭を剃りましょう。
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↑世界中の人が、全く同じ日にハゲになって、ハゲのまま1カ月過ごす。これでアタマジラミは絶滅だね。
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移民がシラミを連れてきてると思う。証拠はないけど、どう見ても不潔な人がいるし。
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シラミ専門の看護師を学校に置くべきだ!
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↑昔いたよね、シラミ専用の保健の先生。
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ガイドラインには、学校が感染した家族に、シラミ感染の事実を伝える事が禁じられるの知ってた?
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↑「貴方の子供は感染しています。」ではなく、「クラス内で感染が報告されました。」が正しい。
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サービスというより、弱みに付け込んだビジネスだよね。
シラミビジネスは危険!?正しい知識を判断を
欧米でブームとなっているシラミビジネスに、ハーバード大学のポラック教授は、医療の専門知識を持たない者が治療を行っている事に警鐘を鳴らしており、実際、シラミ治療でケガや火傷を負った事故の報告が、彼の元に毎月送られてくるのだそうです。
ポラック教授は、シラミは飛び跳ねる事や、帽子や衣類、枕などに住み着く事は無く、頭と頭の接触だけが感染経路。学校を休む事も、必要以上に衣類や寝具を洗う必要もない。ただ、子供の友達がシラミに感染した場合は、要注意が必要なだけ、と述べています。
イギリスを見ただけでも、シラミ市場は3000万ポンド(約43億円)。そして市場に出回っているシラミ製品の80%は、あまり効果が期待できない事も分かっています。今後、ますますシラミビジネスが拡大していきそうな気配です。
【参考URL】http://www.bbc.co.uk/news/business-37617423
https://www.theatlantic.com/health/archive/2015/02/how-often-people-in-various-countries-shower/385470/
http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ra/legionella/392-encyclopedia/412-louse-intro.html
http://pressreleases.responsesource.com/news/67333/head-lice-statistics-children-lose-million-days-from-school-and/
https://www.washingtonpost.com/business/economy/value-added-its-a-bugs-life–until-the-lice-nitpickers-arrive/2013/12/01/cdb17d16-553f-11e3-835d-e7173847c7cc_story.html?utm_term=.9b3c626a97ee
ほんと、よくこんなビジネス思いつくよね。ジョニーも何か探してみようかな。